厚生労働省は３月31日、製薬業界がドラッグ・ロスが生じていると主張した86品目のうち、「医療上の必要性が特に高い医薬品」が14品目だったことを公表した。14品目の中には類薬が開発されていて「至急の開発が不要」と評価された３品目なども含まれており、実際に対応を急ぐ必要性が高いのは８品目にとどまった。2024年度厚生労働科学特別研究事業 「ドラッグ・ロスの実態調査と解決手段の構築」研究班が取りまとめたもの。厚労省は、医療上の必要性が特に高い医薬品14品目について今後開催予定の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」に諮る方針。会議で医療上の必要性が高いと判断された品目については、国内企業への開発要請などを行い、ドラッグ・ロスの解消に取り組む考え。

製薬業界は中医協などの場で、欧米では承認されているものの、日本で国内開発が未着手のドラッグ・ロスが86品目（23年３月時点）あると主張。24年度薬価制度改革での新薬創出等加算の見直しなどにつながった。また、厚労省は24年７月、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議に新たなルートを設け、評価、開発要請などの加速化を図った。これまでは、学会や患者会等からの要望を踏まえて未承認薬・適応外薬について検討がなされてきたが、国が医療上の必要性の評価のために必要な情報を整理するというもの。厚生労働科学特別研究事業を立上げ、医薬品のデータ整理、関連学会へのニーズ調査、市場性調査、開発の優先順位付け等を実施しており、今回結果が公表された。

◎特別研究班　必要性高い品目は41品目、必要性低い品目は11品目、開発必要ない品目は12品目

特別研究班は、医療上の必要性をグループ「A」～「D」の４段階に整理した。グループ「A」（開発の必要性が特に高い医薬品）は14品目、グループＢ（開発の必要性が高い医薬品）が41品目だった。一方、グループＣ（開発の必要性が低い医薬品）が11品目、グループＤ（開発の必要性がない医薬品）が12品目あった。すでに国内開発に着手されているほか、海外で承認が取り消されており、ドラッグ・ロスが解消されている品目も８品目あった。

◎グループ「A」　類薬あり至急の開発不要は３品目、開発着手が２品目

医療上の必要性が特に高いグループ「A」に分類されたのは、国内で類薬が承認されていない、標準的治療法がない疾患に対する医薬品、又は類薬が承認されている場合は類薬の中でも臨床的な重要性の観点で最も優れる医薬品など、可及的速やかに開発を行うべき医薬品とした。ただ、14品目には「類薬が開発中であり、本品目の至急の開発は不要」と評価された品目が３品目、すでに国内で開発されている品目も２品目含まれていた。

すでに医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬の要望募集において、要望提出があった品目も、PRETOMANID（一般名：プレトマニド、多剤耐性結核）、OMEGAVEN（精製魚油、非経口栄養関連胆汁うっ滞）の２品目あった。このほか、▽ARTESUNATE（アルテスネイト、成人および小児の重症マラリアの治療）、▽AYVAKIT（アバプリチニブ、成人の切除不能または転移性の消化管間質腫瘍（GIST）で、血小板由来増殖因子受容体α（PDGFRA）エクソン18に特定の変異（D842V）を有する症例）、▽AKLIEF（トリファロテン、顔や体幹の尋常性ざ瘡）、▽XENLETA（レファムリン酢酸塩、細菌性の市中肺炎（CABP）の治療）、▽NUZYRA（オマダサイクリントシル酸塩、細菌性肺炎、急性細菌性皮膚・皮膚組織感染症）、▽ANTHIM（オビルトキサキシマブ、吸入炭疽の治療）－。ZULRESSO（ブレキサノロン、産後うつ病 (PPD)）は、学会からの医療ニーズに関する回答提出が遅れた。

グループＢの「開発の必要性が高い医薬品」に整理された41品目については、24年度補正予算で確保された「未承認薬等迅速解消促進調査事業」で、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議における評価に必要な情報の整理を行い、準備ができたものから順次、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議で医療上の必要性を評価するとしている。