キョーリン製薬・荻原社長 21年度上期の営業損失に「手を緩めずに投資した結果」
公開日時 2021/11/10 04:50
キョーリン製薬ホールディングスの荻原豊社長は11月9日の2021年度第2四半期の決算会見で、6800万円の営業損失となったことについて、「コスト削減するところは削減し、投資すべきところは手を緩めずに投資した結果」と強調した。上期は新薬群の伸長などで増収とした。しかし利益面は、経費節減に努めたものの、4月の薬価改定や後発品の売上増などで売上原価率は6.4ポイント上昇し、慢性咳嗽治療薬ゲーファピキサントの導入に係る契約一時金も計上したことで、営業損失となった。
ただ、期初予想との比較では、特に長期収載品のペンタサやキプレスAGが想定以上に伸び、売上総利益も予想を上回ったため、営業損失の幅は予想から約7億円緩和された。
◎中長期の成長に「新薬群の売上比率を上げることが責務」
荻原社長は、中長期の成長や利益確保に向けて、「可能な限り新薬群の売上比率を上げることが責務であり、結果的にそうなれば利益にも貢献する。こうなるべく事業を推進したい」と話した。
新薬事業では、喘息薬フルティフォームや抗アレルギー薬デザレックスの普及の最大化、キノロン系抗菌薬ラスビックの呼吸器・耳鼻咽喉科感染症専用キノロンとしてのポジションの確立、出荷調整が22年度中に解除できる見込みの過活動膀胱治療薬ベオーバの成長加速、杏林製薬が国内の独占販売権を持つゲーファピキサントの上市――に取り組む。ゲーファピキサントはMSDが2月に承認申請したもので、難治性又は原因不明の慢性咳嗽を効能・効果とする初の治療薬となる可能性がある。
◎連結売上491億円、実質的に20億円ほど増収
21年度上期の連結業績は、売上491億円、営業損失6800万円だった。21年度から新会計基準を適用したため前年同期増減率は公表していないが、荻原社長は「売上は実質的に20億円ほどの増収となった」と説明した。
売上原価率は54.4%となり、前年同期から6.4ポイント上昇した。▽6%台の薬価改定影響▽後発品の売上増▽棚卸資産の除却損等の増加――が理由となる。ゲーファピキサント導入に係る契約一時金も今期に計上したが、具体的な金額は開示していない。
◎代替需要 ペンタサ錠、キプレス、キプレスAGの3製品で「強く影響」 下期も需要増見込む
連結売上の内訳は、国内の「新医薬品等」が333億円、後発品は155億円だった。
「新医薬品等」では、ベオーバやデザレックスなどの新薬群が伸長したほか、一部の後発品企業の品質問題に端を発した製品の供給不安により、特に長期収載品のペンタサが伸びた。ペンタサの売上は71億円(前年同期比12.0%増)で、期初予想から11億円上乗せした。後発品事業でも、特にキプレスAGが51億円(同13.2%増)を売り上げ、期初予想から11億円積み増した。
荻原茂専務取締役(杏林製薬社長)は後発品の供給不安に伴う代替需要で、特にペンタサの錠剤、キプレス、キプレスAGの3製品で「強く影響を受けた」と説明した。製造元や自社工場で可能な限り増産対応したという。21年度下期の見通しについては、「後発品メーカーもかなり品質強化に向けて体制を整えていると聞いている」との認識を示した上で、「これら3製品については後発品メーカーの供給で十分に対応できないと考えている。需要増は下期も継続すると考えている」と話した。
【連結業績(前年同期比) 21年度予想(前年同期比)】
売上高 491億200万円(-) 1026億円(-)
営業利益 △6800万円(-) 33億円(-)
親会社帰属純利益 1億2100万円(-) 27億円(-)
*「収益認識に関する会計基準」を期首から適用しているため、対前年同四半期増減率は記載していない。
【国内主要製品売上高(前年同期実績) 21年度予想、億円】
フルティフォーム 63(64)139
デザレックス 26(18)72
ベオーバ 43(38)86
ラスビック 8(2)28
ペンタサ 71(64)117
ウリトス 7(16)10
ナゾネックス 7(6)18
キプレス 36(35)69
ムコダイン 16(14)29
ジェネリック計 154(143)331
うち、キプレスAG 51(45)92
うち、ナゾネックスAG 10(9)35
うち、ウリトスAG 4(3)7