新型コロナ治療薬・パキロビッド 院外処方も「積極的に検討」を 連携の必要性も指摘 厚労省
公開日時 2022/02/14 04:51
厚生労働省は、新規の経口新型コロナウイルス感染症治療薬パキロビッドについて、試験運用期間中に院外処方も「積極的に検討」するよう周知した。併用禁忌となる薬剤が多いことから、2月27日までの試験運用期間中は同剤を処方・調剤できる医療機関や薬局を限定し、実績を積み上げ、課題を洗い出したい考え。医療機関・薬局間の連携も確認する。必要に応じて添付文書や説明資材を改訂するなどして、患者にとって安全な環境を整備し、28日以降、全国へと拡大する方針。
◎「処方時には、服薬中のすべての薬剤を確認して」 チェックシート参照も
試験運用期間中は、新型コロナ病床確保医療機関約2000施設と、要件を満たした一部の地域の薬局(以下、パキロビッド対応薬局)でのみ同剤を処方・調剤する。パキロビッド対応薬局の要件は、服薬指導等の実施や薬剤の広範な配送等に対応できる、夜間・休日や時間外、緊急時に対応できる、都道府県内の新型コロナ病床確保医療機関と緊密な連携がとれる――こととした。
同剤については現状、安定供給が難しいことから一般流通は行わず、当面の間は厚労省が所有し、医療機関及び薬局からの依頼に基づき、同剤を配分・無償譲渡することになる。必要以上の配分依頼や在庫を確保しないことも求めた。同剤は14日から供給される予定で、製品供給は厚労省から委託されたファイザーが行う。同剤の処方に際しては、「併用禁忌及び併用注意の薬剤が多数ある」として、医師や薬剤師に「処方時には、服薬中のすべての薬剤を確認してください」と呼びかけた。ファイザーが作成した「パキロビッドパック投与前チェックシート」を参照することも求めた。
2月10日付に自治体宛に発出した事務連絡では、医師や薬剤師に対し、同剤の投与対象となる患者について併用禁忌や併用注意の薬剤の服薬の有無を「必ず確認」したうえで配分の依頼などを行うことを求めた。また、院外処方時には、チェックリストも活用し、必要に応じてかかりつけ薬剤師・薬局や過去に利用したことのある薬局と連携して、併用禁忌や併用注意薬剤の服薬の有無を必ず確認することを求めている。
そのうえで、ファイザーが開設する「パキロビッド登録センター」に登録し、配分依頼することを求めた。投与予定の患者がいる場合に同センターに発注することを基本とするが、速やかに患者に対応するため、パキロビッドの場合は最大5人分の在庫配置も認めた。同剤の納品は原則、発注後1~2日程度(日曜祝日除く)。
院外処方時には、患者に都道府県がまとめた「パキロビッド対応薬局リスト」を提示して希望する対応薬局を決定するとともに、患者には帰宅を指示する。パキロビッドを投与した医療機関は投与後の定期的なフォローアップを行うほか、医療機関及び対応薬局はパキロビッド登録センターの指示に従って使用実績報告を入力することとした。
◎投与対象患者像 60歳以上、喫煙者、慢性肺疾患など
同剤の主な投与対象は、重症化リスク因子を有する軽症~中等症Ⅰの患者。具体的には、日本感染症学会の「COVID-19に対する薬物治療の考え方 第13報」(22年2月10日)を引用する形で、同剤の投与が必要と考えられる患者として、▽60歳以上▽BMI 25kg/m2超▽喫煙者(過去30日以内の喫煙があり、かつ生涯に100本以上の喫煙がある)▽免疫抑制疾患又は免疫抑制剤の継続投与▽慢性肺疾患(喘息は、処方薬の連日投与を要する場合のみ)▽高血圧の診断を受けている▽心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中、一過性脳虚血発作、心不全、ニトログリセリンが処方された狭心症、冠動脈バイパス術、経皮的冠動脈形成術、頚動脈内膜剥離術又は大動脈バイパス術の既往を有する)▽1型又は2型糖尿病▽限局性皮膚がんを除く活動性のがん▽慢性腎臓病▽神経発達障害(脳性麻痺、ダウン症候群等)又は医学的複雑性を付与するその他の疾患(遺伝性疾患、メタボリックシンドローム、重度の先天異常等)▽医療技術への依存(SARS-CoV-2による感染症と無関係な持続陽圧呼吸療法等)――とした。
また、承認審査における評価資料となった国際共同第2/3相試験(C4671005(EPIC-HR)試験)の組み入れ基準や、新型コロナに係る国内の主要な診療ガイドライン「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第6.2版」(令和4年1月27日)――も投与患者に想定されると指摘。例えば、「慢性閉塞性肺疾患」「悪性腫瘍」「脂質異常症」の患者も含まれる。
事務連絡では、「これらのいずれかを有する者であって、医師が必要と判断した者については、本剤の投与対象になり得ると考えられるので、投与に当たって参考にしてほしい」としている。
なお、同剤は2月10日に特例承認された。