アロイ・セラピューティクス日本法人 「iCAR-T」プラットフォームで固形腫瘍克服へ 治療コスト削減も
公開日時 2025/05/21 04:50

米バイオテクノロジー企業のアロイ・セラピューティクスは5月20日、湘南ヘルスイノベーションパークで記者会見に臨み、日本法人を設立したと発表した。日本法人の代表取締役社長に就任した石井喜英氏(写真)は会見で、アロイとして初の細胞治療の研究拠点を湘南アイパーク内に開設したと明かした。また、独自の細胞治療技術である「iCAR-T」のプラットフォームを活用し、固形腫瘍の克服に必要な技術検証に加えて、治験コストの削減などに挑戦する考えを表明した。
アロイ・セラピューティクスは、最先端の創薬技術をベンチャーやアカデミアなど多様なプレイヤーがアクセスできる形で幅広く提供し、パートナー同士の協力を促進しながら優れた創薬を支援するバイオ企業。グローバルの従業員数は110人で、米国マサチューセッツ州に本拠地を置き、拠点は米国、英国、スイスに続き、日本法人を設立した。石井社長は同社について、「抗体を皮切りにオリゴ核酸など様々な技術を持って顧客の創薬を支援する」と説明。「その中で日本から、iPS由来の細胞治療を立ち上げることになった」と述べた。
同社は独自の細胞治療技術「iCAR-T」を用いたプラットフォームを日本法人で本格展開する。iCAR-Tプラットフォームは、山中伸弥教授のiPS細胞研究を基盤とし、京都大学iPS細胞研究所の金子新教授が武田薬品と牽引したT-CiRAプログラムを通じ開発された。これまでは自家CAR-Tを用いた細胞治療が行われてきたが、石井社長は、「このプラットフォームを活用することで動物実験モデルにおいては自家よりも他家の方が薬効が強いという結果を得ている」と説明。「臨床に進める中で他家CAR-Tの可能性について技術検証を行う」との方針を表明した。
すでにスケールアップは実証済みで、「製造コスト効率を活かして早期臨床試験を支援することも可能」という。さらに、今後の戦略では「iCAR-T細胞治療を含む完全統合型の創薬・開発プラットフォームをパートナーに提供する」とも強調した。
石井社長はまた、iCAR-Tの次のフェースに触れ、「高齢者など自己免疫が衰えてしまった患者のT細胞ではがんを凌駕できないケースがある。そこに強い免疫細胞を移植することで固形腫瘍を粉砕する」との可能性に言及。自家CAR-Tに対して他家CAR-Tは作り置きができ、院内に常備できるほか、1回の投与分の製造コストを削減できると述べ、「iCAR-Tによるコスト削減が実現することで、段階的な治験が可能となる」と指摘。「あらゆる技術の検証に必要な治験を⼤幅に増やすことで、やがては固形腫瘍を克服する突破⼝へ導いてくれると信じている」とも強調した。