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バイタルケーエスケーHD・村井社長 「製薬企業をグループ内に立ち上げる」 未承認薬導入支援事業を展開

公開日時 2025/05/16 04:51
バイタルケーエスケー・ホールディングス(HD)の村井泰介代表取締役社長は5月15日の2024年度決算・中期経営計画2027の説明会で、「製薬企業をグループ内に立ち上げる」と表明した。この製薬企業(以下、新会社)は、中期経営計画に盛り込んだ国内未承認薬の導入支援事業を展開する企業で、「可及的速やかに設置する」と述べた。村井社長は、導入した国内未承認薬の承認申請は新会社から行いたい意向で、第一種医薬品製造販売業許可を取得する方向を示唆した。

27年度を最終年度とする3カ年の「中期経営計画2027」は4月17日に発表した(記事はこちら。中期経営計画は、▽医薬品卸売事業など既存事業のROIC(投下資本利益率)の改善と成長の促進、▽将来の収益の柱となる新規事業の創出――で構成され、新規事業のひとつに「製薬事業(未承認薬導入支援事業)」を掲げた。

◎導入や開発の費用 現時点では3年間で33億円

村井社長は、未承認薬導入支援事業はこの3年間は仕込みの時期で、28年度以降の収益貢献を期待していると述べた。導入や開発に係る費用は現時点で25年度9億円、26年度15億円、27年度9億円で計33億円を充てる計画。また、25年度以降は、事業ごとに収益性や成長性を評価・モニタリングし、不採算や低成長の事業は再生又は撤退を判断する方針も打ち出しており、国内未承認薬を手掛けるとはいえ、新会社単体としての収益貢献も今後評価していく。

◎鈴木取締役 ドラッグラグ問題に「主体的に関わり、社会課題解決に関わっていきたい」

6月26日付で取締役事業開発担当に就任予定の鈴木三尚取締役(営業・仕入担当兼MAPs担当)は、未承認薬導入支援事業に参入する背景やスキームなどを説明した。「(当社グループは)これまで病院市場でのプレゼンスの一層の強化に取り組むなどしてきた。臨床医との関わりが深くなる中で、我々にできることがもっとあると感じた」と振り返った。

そして、「医療に関わる企業として、我が国のドラッグロス・ラグ問題に今まで以上に主体的に関わり、社会課題解決に関わっていきたい」とし、未承認薬問題に取り組むことで、「より一層の企業価値向上を実現し、中長期にわたって地域のヘルスケアを支える社会インフラとしての責任を果たすことにもなる」との判断に至り、同事業に参入することを決めたと述べた。

未承認薬導入支援事業は、海外で上市済みの医薬品をバイタルケーエスケーグループが導入し、同社グループが輸入・パッケージ製造、臨床開発・市販後調査、マーケティング、販売、国内流入――のサプライチェーン全体に関わっていくというもの。医薬品の開発・上市にあたり同社グループが持ち合わせていない開発機能や製造機能などは、「これまでの事業で出会った高い専門性と機能を持つパートナー企業と進める」、「質をきちんと担保した上で、リーンな体制を組む」(鈴木取締役)と説明した。国内上市に成功した場合、コア事業の医薬品卸売事業などとのシナジーが想定され、「サプライチェーン全体の中でほぼ独占的な収益機会の創出が期待できる」と語った。

◎村井社長 手掛ける未承認薬「極めて限定した疾患領域をねらう」

同社グループが手掛ける未承認薬のイメージも気になるところ。この点について村井社長は、「極めて限定した疾患領域をねらう。使う医療機関も限られる」と述べたが、具体的なイメージには触れなかった。

既存の製薬企業が国内導入・開発に二の足を踏む未承認薬がある場合、なぜ当該未承認薬をバイタルケーエスケーHDは導入する可能性があるのかも気になるところ。大手製薬企業でのキャリアを持つ村井社長は、営業、研究開発、生産などフルファンクションの製薬企業と、研究開発などの機能を持たないバイタルケーエスケーグループではハードルレート(=投資判断における最低限達成すべき収益率)が違うと指摘。「大手製薬企業のハードルレートは極めて高い。これに比べて当社は6%。大手製薬企業なら手を出しにくい医薬品でも、当社ならやれるかなというところはある」と話してくれた。ただし、導入案件については、社内の投資委員会で社内基準に沿って、「将来の収益性を厳格に検討する」とも強調した。

なお、同社グループのハードルレートは、連結のWACC(=企業が資金調達のために支払うコスト(負債コストと株主資本コスト)の加重平均)を採用し、現時点でWACCは6.0%程度としている。

このほか、未承認薬導入支援事業に参入する上での最大のリスクは国内承認されないリスクだが、鈴木取締役は「既に欧米で承認済みの医薬品の国内導入の試みであり、その可能性は限りなく低い」との見方を示した。想定薬価よりも低く算定されるリスクについては、「様々な想定薬価を設定した緻密なシミュレーションを実施し、リスクコントロールの徹底を図る」とした。

◎24年度は増収増益 売上総利益率2.2%増 村井社長「取引コストを重視した取り組みが浸透」

バイタルケーエスケーHDの24年度連結業績は、売上高は前年度比2.2%増の6003億7000万円、営業利益は2.7%増の57億600万円――などとなり、増収、各利益段階で増益となった。

医薬品等卸売事業は、売上高は2.1%増の5646億1400万円、売上総利益は2.2%増の413億5800万円、売上総利益率は0.01ポイント増の7.33%、営業利益は5.1%増の51億6300万円、営業利益率は0.02ポイント改善の0.91%――だった。

売上高は、24年4月の薬価改定影響のほか、前年度に計上した新型コロナの治療薬や検査キットなどの販売が減少するなどのマイナス影響を、▽インフルエンザの流行による検査キットや治療薬の販売の伸長、▽抗がん剤を中心とした新薬創出等加算品および子宮頸がんワクチン、10月から接種が開始られた新型コロナワクチン等の販売の伸長――により減収分をカバーして増収となった。

利益面は、前年度に▽国や自治体から受託した新型コロナワクチン配送収益、▽大口先の貸倒引当金の戻入金――による一時的な利益13億6700万円を計上し、今期はその反動があったものの、増収効果や、一貫して取り組んできた流通コストを踏まえた丁寧な価格交渉により営業増益となった。喜多勇夫取締役(経理財務担当)は、「コア事業の医薬品卸売事業は、確実に収益を確保できる体制が固まってきた」と報告。村井社長も「取引コストを重視した取り組みが浸透している」と評価した。
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