中外製薬 09年度業績は過去最高 アクテムラの海外市場開拓も順調
公開日時 2010/02/04 04:02
中外製薬は2月3日、09年度(1-12月)の連結決算を発表した。インフルエンザ治療薬タミフルの大幅な売上増や、抗がん剤の2ケタ増など成長ドライバーの伸長に支えられ、増収増益となり、売上高、営業利益、経常利益、純利益はいずれも過去最高の業績を達成した。都内で会見した永山治社長は、10年度について「中期経営計画『Sunrise2012』(目標売上高4600億円、営業利益800億円)に向けて軌道に乗っていると捉えている」と自信を示した。
売上高は前年同期比31.2%増の4289億円(タミフルを除くと9.4%増)。このうちタミフルは762億円で、前年同期(84億円)から急増した。昨年の4月以降の新型インフルエンザの患者数は推計2600万人だったが、そのうちタミフルが処方されたのは推計1100万。その結果、通常売上が362億円(前年同期71億円増)、行政備蓄等が400億円(13億円増)と高水準に推移した。
抗がん剤は大腸がん治療薬アバスチンが対前年比73.6%増の349億円、乳がん治療薬ハーセプチンが25.3%増の297億円で、がん領域では昨年に引き続き国内シェア第一位(17.3%)を維持した。また、関節リウマチ治療薬アクテムラも国内外ともに市場浸透が進み、140%増の173億円(国内84億円、海外89億円)。同剤は国内のリウマチの生物製剤市場で約10%のシェアを獲得しており、ファーストラインでは40%超使用されているとういう。
一方、包括化や競合品(ネスプ、協和発酵キリン)の参入による価格対応などで売上減少にあった腎性貧血治療薬エポジンは、減少に歯止めがかかり始め、1.1%減の444億円となった。利益面では、営業費用や研究開発費の増加を、売上総利益が吸収し、営業利益は前年同期比60.1%増の826億円となった。純利益は44.0%増の566億円。
今年度は減収減益を見込む。新型インフルエンザが下火になってきたことや市場の環境変化などからタミフルの大幅減(対前年比49.2%減)などが影響し、売上高は対前年比2.4%減の4185億円。領域別では、がん領域や骨・関節領域などは伸長を予想するものの、腎領域は薬価改定の影響やエポジンの4~5月にバイオ後続品の発売が想定されるため減収を見込む。永山社長は今後の戦略について「エポジンの防衛をしているが、今まで培ったノウハウを使い、ネスプとの競合もなんとか守れると思う。(ネスプの競合品となる)ミルセラ(申請中)が市場に出るまで、専門性を発揮し、競争力を維持していきたい」と意気込みを示した。
営業利益は特殊要因(タミフル、薬価改定)による減少、営業費や研究開発費の増加が響き、15.3%減の700億円を予想。今年度実施される薬価改定で予想される同社への影響については「精査している最中」と述べるにとどまった。
同社の営業体制はMR1700人。専門性強化を目的に、プライマリーユニット(1150人、うち腎専門MR300人が含まれる)を新設し、オンコロジーユニットとの2ユニット体制に改めた。がん専門MRは500人から550人に増員したが、10年度はMRの増員の計画はない。