第一三共 「ジョブ型人材マネジメント」導入 新報酬制度 幹部職層登用の30歳代社員「年収40%増」
公開日時 2025/05/13 04:52

第一三共の奥澤宏幸代表取締役社長兼CEOは5月12日の記者説明会で、「ジョブ型人材マネジメント」をグローバル共通人事制度に導入したと発表した。同社はエンハーツの導入が日本を含むグローバル市場で進展する中、国や地域を超えた人材活用や人的資本拡充策が必要だと判断。旧人材マネジメントのコアである「メンバーシップ型」を一部残しながら「ジョブ型」への転換に舵を切った。これに伴い、キャリア採用の比率を高めたほか、評価制度や等級制度を見直し、社員の担う職務の大きさに応じて昇給・降給する新報酬制度も導入した。奥澤社長兼CEOは、「私はアカウンタブル・マインドセットを持った人材が必要だと考えている」と指摘。「会社のパーパスと社員自身のパーパスを重ね合わせることがエンゲージメントにつながると信じている。そのような意識、行動を社員に促していきたい」と述べた。
同社は4月25日の24年度決算経営説明会で、第5期中期経営計画(2021-2025)のがん領域を含む売上収益の「KPI」が達成されるとの見通しを公表。その先の2030年ビジョン達成に向けた第6期中期経営計画策定の土台固めに入ろうとしている。「オンコロジーでグローバルトップ10達成はもはや確実視」(奥澤社長兼CEO)と目される一方で、同社の課題は、「これまで経験したことのないスピードとスケールでのグローバル化」に耐え得るグローバル人材の育成・確保で、国や地域を超えた「人的資本拡充策のさらなる高度化」が重要視されてきた。
◎評価・等級・報酬制度を国や地域を超えて共通化
全社員対象のグローバル共通人事制度は、評価・等級・報酬制度を国や地域を超えて共通化する。日本では、これまで年功序列に代表されるような、職務を限定せずに人に仕事に割り当てる“メンバーシップ型”を採用してきたが、新たな人事制度では、仕事に人を割り当てる“ジョブ型”をベースとした「DS版ジョブ型人材マネジメント」に移行させた。
新たな評価制度では、社員の能力やモチベーションを引き出し、主体的な行動を促すことで、個人のパフォーマンスを最大化する。目標設定に際して「ストレッチ目標」を導入し、社員のスキル、能力の伸長や挑戦的な目標設定を通じた組織業績の拡大に狙いを込めた。また、社員の組織貢献意識も醸成したい考え。成果検証に際しては、日常的に上司と部下の1on1を通じたコーチング、フィードバックを通じて、社員の更なる気づき・成長を支援し、主体的な行動を促す。
◎年功的な運用を全廃 年齢や勤続年数問わず、職務・職責の大きさを軸に等級運用を実現
等級制度では、従来の制度における年功的な運用を全廃し、年齢や勤続年数問わず、職務・職責の大きさを軸とする等級運用を実現する。その上で新報酬制度を設け、新等級体系に応じた報酬テーブルを再設計した。夏・冬年2回の賞与を夏の年1回支給に変更。昇給・降給ルールや、上級幹部職層の社員を対象としたLTI制度(信託型株式付与制度)も導入する。なお、今回の報酬制度の導入で、幹部職層に新しく登用された30代社員の場合、平均年収は約40%増となるほか、初任給は大卒者(例・研究職・営業職)で35万円(これまでは25万5000円)、修士・学士6年制卒で37万円(27万9000円)となる。
◎奥澤社長兼CEO 「アカウンタブル・マインドセットを持った人材が必要」
この日の記者説明会で奥澤社長兼CEOは新しい人事制度の必要性について、「私はアカウンタブル・マインドセットを持った人材が必要だと社員に話している」と指摘。「目の前に次々と現れる問題に対し、社員自らが当事者意識を持って、問題を眺め、自ら主体的に行動を起こすことで必ず何か会社に貢献できる。そんな人材を求めている」と強調する。特に、日本の社員に対しては、これまでの“メンバーシップ型”が新人事制度で“DSのジョブ型”に変わる意義について、「各社員の内発的動機づけに突き動かされて、自分のキャリアを形成をしていくとこういったことを促したい」と述べ、「常に自分はこの会社の中でどうやって貢献したいのか、どういうキャリアを築いていきたいのか、“手挙げ”で掴むこともあれば会社からのオファーに対して主体的にアクションをとることもできる」と述べ、自律的成長をベースとした制度であることを強調した。