米・トランプ大統領 薬価引下げの大統領令に署名 「59~80%、最大90%」の引下げへ 追加的措置も
公開日時 2025/05/13 05:20

米・トランプ大統領は5月12日(現地時間)、処方薬の薬価引下げに向けた大統領令に署名した。米国の薬価は他のOECD諸国に比べて3倍以上高いとのデータを引き合いに、他国と同水準まで薬価を引下げることを製薬企業に要求した。従わない場合に関税を導入することもちらつかせ、製薬企業に交渉のテーブルにつくことを求める。トランプ大統領は同日会見し、「アメリカは世界人口の5%未満だが、世界の製薬業界の利益の約75%を賄っている」と指摘。「59~80%、最大90%薬価を引下げる可能性もある」と言及した。
大統領令では、米国通商代表部(USTR)と商務長官に対し、外国が意図的に市場価格を不当に引き下げ、米国での価格高騰を誘発する行為を行わないよう措置を講じるよう指示している。
◎米国が最良の条件で購入できるよう30日以内に製薬企業に価格目標を提示

政府は、「処方薬の世界最大の購入者であり、資金提供者」である米国が最良の条件で購入できるよう、今後30日以内に製薬企業に価格目標を提示。従わない場合には、追加的な措置を講じるとした。保健福祉長官は、米国の患者が仲介業者を介さずに「最恵国価格」として、製薬会社から直接医薬品を購入できる仕組みを構築することを指示した。
◎「米国は世界人口の5%未満だが、世界の製薬企業の利益の約75%を賄っている」
「米国は世界人口の5%未満だが、世界の製薬企業の利益の約75%を賄っている」-。トランプ大統領は、「製薬会社はほとんどの収益をアメリカから得ている。これは良いことではない」と指摘。抗がん剤や喘息治療薬、肥満治療薬の欧州などとの価格差を説明。「米国では1人当たり1126ドルを医薬品に使っているが、英国では約240ドルと、約5分の1の金額だ。欧州全体でも同様だ」として、“公平”である必要性を強調した。
◎トランプ大統領 米国の国民が最も安価な薬価で医薬品にアクセスできる必要性を強調

そのうえで、「製薬企業は海外市場へのアクセスを得るために製品を値引きし、その後、アメリカ国内で高値を設定することでその値引きを補填している」、「製薬企業が米国政府による多額の研究助成金と巨額の医療費支出の恩恵を受けているにもかかわらず、アメリカ国民は製薬会社の利益と海外の医療制度を補助している」と批判。米国の国民が最も安価な薬価で医薬品にアクセスできる必要性を強調した。
トランプ大統領は、「私たちは米国でビジネスをするための費用を彼らに請求する。皆が同じ価格を支払うべきだ」として、従わない国に対しては関税の措置を加えることもちらつかせた。