中医協総会 在宅医療で医療ICTの活用が論点に 支払側が遠隔診療の評価求める
公開日時 2017/01/12 03:50
中医協総会が1月11日開かれ、次期診療報酬改定に向けて在宅医療をテーマに議論を行った。具体的な個別項目を議論するのはこの日が初めて。支払側は、生活習慣病治療などで医療ICTを活用した遠隔診療の評価について議論することを提案。”原則、対面診療”の堅守を求める診療側との間で早くも火花が散った。医療ICTの評価は、政府の未来投資会議が求めている。厚労省も次期診療報酬改定の検討項目に、ICT、AI(人工知能)など「次世代の医療を担うサービスイノベーション推進」を盛り込んでおり、次期改定の目玉とみられている。
2025年にも到来する超高齢化社会に向けて、地域包括ケアシステムの構築が求められる中で、次期診療報酬改定では重要なマイルストーンとなる。中でも、地域包括ケアシステムの根幹を担う在宅医療は、提供する医療の質や量に加え、効率化も重要な観点となる。
◎診療側・中川委員「対面診療が原則」と猛反発
この日の中医協総会で支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、限られた医療資源を有効活用する観点から、「在宅医療を支える上で、医療資源の効率化」が必要だと口火を切った。幸野委員は、医療機関だけでなく、患者にもICT化の波が押し寄せており、高齢者でもスマホの活用などが進んでいるとの認識を示した。現在スマホを活用する60~65歳が後期高齢者となる2025年の姿を想定した際に、「75歳前後でもスマホやICTが活用できるような時代が来ている。10年後には医師と患者のかかわり方が変わる時代がくる」と見通した。その上で、今からICT化時代の医療サービスの在り方について議論することが必要との考えを示した。
具体的には、高血圧などの生活習慣病患者を例にあげ、血圧や血糖値は患者が自ら自宅で測定できると指摘。医師や薬剤師が患者の居宅を訪問するのではなく、スマホの持つ機能である写真メール、テレビ電話を活用して遠隔診療を行うことを例としてあげた。
これに対し、診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)は、「ICTがいくら発達しても、医療は変わってはいけない。医療は対面診療が原則だ」、「診察はコミュニケーションが取れればいいのではない。顔色や息遣い、雰囲気も表情もその時の状況も対面でやるのが原則で、きわめて重要だ」と猛反発。医療ICTはあくまで“補完するツール”に過ぎないとの考えを強調した。また、患者の状態を判断するのもかかりつけ医の役目であり、薬剤師や看護師などの活用にも反対した。
診療側の松原謙二委員(日本医師会副会長)も、「在宅医療で看る患者は、寝たきりに近い状態。何が起こるかわからない。それだけ弱っている状態だ」との認識を示し、遠隔診療で対応することは難しいとの見方を示した。
診療側の猪口雄二委員(全日本病院協会副会長)は、日本各地で医療資源や環境が異なり、医療ICTや遠隔診療の位置づけや重みが異なると指摘した。「例えば北海道で雪がひどい時にどう往診するか訪問看護に行くかということも問題になる。遠隔診療も有益なところでは使えばいい。都会のようにすぐかかれるところであれば、その方が優しい」と述べ、遠隔診療を是か非で論ずるのではなく、「訪問、在宅については過疎地では広げられなくて困っている実情がある。広く議論していくべきだ」との考えを示した。