「世界に尽くせ、タケダ」 武田薬品がCMに込めたイノベーションへの想い 人類共通問題に挑む
公開日時 2024/05/20 04:52
「世界に尽くせ、タケダ。」―。印象的なメッセージとともに、武田薬品はCMを通じて、革新的な創薬の研究開発やグローバルな課題に取り組む企業姿勢を打ち出す。創業240周年を迎えた2021年からこれまでに4作品を公開。社員自らが出演し、研究開発や製造の現場やドローンでの医薬品配送など最前線の姿を描いている。シリーズ一貫して「人類共通問題」に立ち向かうという壮大なCMシリーズに込めた思いとは。武田薬品グローバルコーポレートアフェアーズパブリックリレーションズの金澤佑紀さん(写真左)と王麗宣さん(同右)に聞いた。
シリーズCMは2021年12月の「iPS細胞」編を皮切りに、22年2月の「ダイバーシティ」編、22年8月の「製造・供給」編、23年8月の「地域医療」編―の4作品を公開。「治療法のない病を0(ゼロ)にせよ」、「人と人を隔てる、あらゆる壁をなくせ」、「ひとりに尽くせ」、「距離の壁を越えろ」―。CMごとに「人類共通問題」を設定し、難題に対して社員が革新的かつ多様な方法で挑む姿を描いている。企画から携わる金澤さんは「製薬企業としてグローバルに革新的な事業を展開している。どうしたらイノベーションをもたらせるかということに挑戦する姿勢を多くの方に知ってほしい」と強調する。
◎メインターゲットは30代、40代のビジネスパーソン
メインターゲットは30代、40代のビジネスパーソン。CMを通じて企業の姿を知ってもらうことで、金澤さんは「ちょっと遠い存在だった製薬企業が、実はこんな観点で一緒に組めるかも、こんな仕事ができるかもという姿を伝えたい」と狙いを語る。また、作品中では社内外との連携や協業も印象的に描かれる。「今や製薬業界は1社だけで完結できる世界ではない。いろいろなパートナーと、新たなアイデアを持ち寄って患者さんの健康や人々の生活を豊かにしていくことを考えていきたい。もっと幅を広げていきたい」(金澤さん)との思いも重ねられているという。
◎撮影での難しさや苦労 ドローンや無菌室の撮影も「多くの社員の協力あって実現」
医薬品を生み出し、届ける最前線での撮影は難しさや苦労もあった。第4弾の「地域医療」編では、離島に医薬品を届けるドローンが登場する。印象的な空撮は別のドローンで追いかけながら撮影。高い操縦技術が求められることに加え、海上での撮影は天気とにらみ合いながらの挑戦だったという。第3弾の「製造・供給」編は大阪工場が舞台。72時間という有効期間の限られた医薬品の受注生産に取り組む製造チームを撮影するため、普段は限られた社員しか入ることを許されない無菌室での撮影を敢行した。製造休止期間ではあったが、リスクを持ち込まないために機材は数時間かけて消毒。通常数十人態勢の撮影クルーも最少数人に制限され、壁によりかかることも許されない現場だった。金澤さんも「“私たちの思いや取り組みを届けてほしい”と、多くの社員の協力があって実現した撮影だった」と振り返る。
「世界に尽くす」姿を伝える上で、CMにとどまらず、自社サイトで展開していたオウンドメディアの活用も広がる。CMで描いたストーリーを拡充したり、深掘りしたりする記事や動画を公開。さらに専門的な用語が多くなりがちなコンテンツを「ナンダ?」のキーワードでかみ砕いたサブキャンペーンも展開。「新薬を生み出す『治験』ってナンダ?」「気候変動と病気の関係ってナンダ?」と、見せ方を変えることで製薬業界に詳しくない人でも入りやすい仕掛けづくりをしている。担当する王さんは「私たちの事業を知ってもらうために、どんな変化球を投げられるか。じわじわと興味関心をそそる、気になるコンテンツで伝えていきたい」と話す。
◎“世界に尽くせ”は「社員一人ひとりに向けられた合言葉でもある」
そもそも「世界に尽くせ、タケダ。」ってナンダ? そんな疑問に王さんは「企業のスタンスを対外的に打ち出すと同時に、社員一人ひとりに向けられた合言葉でもあるんです」と明かす。日本を含めた文字通りの世界だけでなく、仕事の持ち場だったり、担当する疾患領域だったりと“世界”の捉え方は人それぞれ。「“世界”のために貢献できているか」。そう社員に問いかけ、鼓舞する意味も込められているという。