インフルエンザワクチンは高齢者の優先接種呼びかけへ 新型コロナとインフルの同時流行見据え
公開日時 2020/08/27 04:50
今冬の新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの同時流行を見据え、厚生労働省は8月26日、65歳以上の高齢者や医療従事者に優先的な接種を呼びかけることを決めた。同日の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会・第45回厚生科学審議会感染症部会の合同部会で、了承された。
高齢者など、重症化リスクの高い人に対して優先的な接種を呼びかけることで、接種機会を逃がさないよう体制整備を進める。ただ、新型コロナの流行が懸念され、インフルエンザワクチンの需要が高まるとみられ、希望者すべての量を10月上旬に確保するのは難しい状況にある。こうしたなかで、接種を待つことなどへの国民の理解を深めたい考えだ。
具体的には、65歳以上の高齢者で接種を希望する人は例年通り10月1日からの接種開始に向けて呼びかける。医療従事者や65歳未満の基礎疾患を有する人、妊婦、乳幼児から小学校低学年(小学校2年生)には10月後半から接種を希望する人への接種を呼びかける考えだ。インフルエンザワクチンは予防接種法上、行政から対象者に接種勧奨を行う対象ではなく、呼びかけは接種を希望される人が対象。接種する人が、リスク・ベネフィットを勘案して最終的に判断することとなっている。
日本感染症学会は、新型コロナとインフルエンザの同時流行を「最大限に警戒すべき」として、「医療関係者、 ⾼齢者、ハイリスク群の患者も含め、インフルエンザワクチン接種が強く推奨される」、「小児(特に乳幼児~小学校低学年(2年生))へのインフルエンザワクチンについても、接種が強く推奨される」と提言していたことを踏まえた。
◎インフルエンザワクチン 供給量は約3178万本に
今冬に供給されるインフルエンザワクチンの見込み量は、約3178万本(成人量で6356万回分に相当)で、昨年度から約7%増加し、4価ワクチンに変更された2015年以降で最大となる見込み。国家検定にかかわる省令改正で、製造から出荷までの期間も短縮し、全体的に出荷が早まる見通しという。ただ、接種開始時の10月1日に、すべての希望者分のワクチンを供給することは難しいことから、医療現場などでの混乱を避けるために、優先順位を決めた。
◎過去には流通が影響のケースも
同日の部会では、国民へのリスクコミュニケーションの重要性を指摘する声が委員からは相次いだ。正林督章健康局長は、報道などでワクチンが全国的に不足しているとの誤解が広まり、ワクチンの需要が高まり、結果的にワクチン不足に陥る悪循環が発生したケースがあったことを説明。「よくよく調べると、医療機関を扱っている卸が特定の企業からの供給を優先していて、そのメーカーのワクチンが入っていないが隣の診療所には入っている。そういうことがわかって、実際には地域に供給ができている」事例があったことも説明。「丁寧なリスクコミュニケーションが重要だ」と述べた。
◎日医・釜萢常任理事「全医療機関が全力で対応することを共通認識に」
同時流行を見据えた、外来・検査体制の在り方についても議論が及んだ。厚労省は、「かかりつけ医等の地域で身近な医療機関において、必要な感染予防策を講じた上で、相談・外来診療・検査を行う体制」を10月中にも整備したい考え。地域の実情に応じて、多くの医療機関で発熱患者を診療できる体制を整備することが柱の一つとなっている(
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日本医師会の釜萢敏常任理事は、「全医療従事者が力を合わせてできるだけの体制を整えていくことが必要だ。より多くの医療機関が自分のところで検査・診療できる体制が必要だ」と述べた。「全医療機関が全力で対応することを共通認識にしたい」と強調した。また、医療機関の役割を地域住民に周知する重要性も指摘した。
越田理恵委員(金沢市保健局長)は新型コロナの流行期の救急システムへの影響に懸念を示した。実際、新型コロナ以降、たらい回しの事例が増加しているといい、各地域で今冬に向けた体制整備の必要性も高まっている。