【FOCUS 新型コロナとインフルエンザの同時流行に備える MR活動へのインパクトを探る】
公開日時 2020/08/26 04:52
新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの同時流行という、さらなる課題が目前に迫っている。そのカギを握るのが、地域医療の最前線を守るかかりつけ医の機能発揮だ。発熱や倦怠感などの初期症状だけで新型コロナとインフルエンザを鑑別するのは患者のみならず、医師であっても難しい。こうした症状を訴える患者の多くは地域の診療所を受診する。インフルエンザを疑う患者には検査を行い、陽性ならインフルエンザ治療薬を投与する。ただ、新型コロナの登場により、鼻咽頭拭い液を用いた検査は飛沫感染のリスクも高く、一つ判断を誤ると新型コロナの感染拡大を助長しかねない。こうしたなかで、厚生労働省は、検査体制や外来医療の在り方を含めた、地域医療提供体制の構築を急ぎ、10月中にも整備する考えだ。(望月英梨)
◎地域ごとに「相談・外来診療・検査を行う体制を整備する」
「かかりつけ医等の地域で身近な医療機関において、必要な感染予防策を講じた上で、相談・外来診療・検査を行う体制を整備する」―。厚労省は、8月24日に開催した新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードに、こうした考えを示した。現行の体制では、基本的には検体採取を行わないが、唾液を用いたPCR検査の活用も広まるなかで、かかりつけ医がこうした手法を活用して、主体性を発揮して、インフルエンザと新型コロナの鑑別診断に取り組む姿を描いた。発熱患者が医療機関に殺到し、感染が拡大することを避けるために、「事前に電話予約の上、受診することを徹底」したい考えだ。
◎日本感染症学会は「可及的に両方の検査を行う」必要性を指摘
背景には、新型コロナとインフルエンザの鑑別診断の難しさがある。日本感染症学会の提言「今冬のインフルエンザと COVID-19 に備えて」では、「臨床症状のみで両者を鑑別することは困難」と指摘する。合併例もあるなかで、「インフルエンザが強く疑われる場合を除き、可及的に両方の検査を行う」必要性を指摘した。
ただ、当然、新型コロナの疑いがある患者を診療所では患者の導線を時間・空間的に分離することも求められる。このため、免疫が低下している患者が来院する専門外来や導線を分けられない医療機関は、地域外来・検査センターを紹介することも検討するとしている。
◎疑い患者にはインフルエンザ治療薬をまず投与 かかりつけ医の判断を優先
各地域ではこうした状況に最大級の懸念を示し、医療提供体制の整備を急ぐ。東京都医師会は7月30日の会見で、地域包括ケア圏内(学校区)に1つの検査センターとして都内で1400か所(人口1万人当たり1か所程度)へと拡大する考えを示す。かかりつけ医が地域を守る医療提供体制構築を急ぐ(関連記事)。PCRセンターの活用などでは、発熱患者を中心にかえって感染が拡大することにも懸念を示す。唾液を用いたPCR検査であればその日のうちに検査結果を出すことも可能になる。感染症学会では、PCR検査などの供給体が限られることから、「先にインフルエンザ検査を行い、陽性であればインフルエンザの治療を行って経過を見る」としている。ただ、医療現場からは、症状による診断で、インフルエンザ治療薬を投与するなど、かかりつけ医に“自由度”をもたせる必要性を指摘する声もあがっている。
◎同時流行期のMR活動はどうあるべきか リモート面談が主体となる可能性は高い
かかりつけ医を主体とした新たな医療提供体制構築に各地域が急ぐなかで、MR活動にも大きな影響があることが想定される。緊急事態宣言の解除後、開業医ではディテールインパクトが9割まで戻ってきているとのデータもある。ただ、今冬の体制整備に向けて、開業医であっても感染リスクを回避する目的でMRへの訪問自粛を要請される可能性は高い。
一方で、同時流行期においては、高熱や激しい倦怠感で動けない患者に対し、オンラインや電話で対応するケースも急増する見通しだ。院内感染や病棟閉鎖のリスクは今春の緊急事態宣言時を上回るとの見方もある。厚労省も初診時のオンライン診療を時限的、特例的に解禁しているところ。その必要性を感じる医師もこの機会に増加するとの予測もある。こうした状況を踏まえると、MRによる情報提供も、こうした医療現場の課題を十分理解した対応が求められることになりそうだ。
すでに医薬品卸各社も、MSにリモート面談ツールを持たせ、得意先の医師や薬剤師のニーズに応じて、MRにつなぐサービスを準備している。今夏以降、MR活動もFace to Faceによる面談が戻りつつあるが、再び、リモート面談が情報提供活動の主体となる可能性は高い。製薬企業も、医療現場の変化に目を向け、いち早く対応を検討することが必要と言える。