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エストロゲン受容体陽性・HER2陰性乳がんへの術前補助化学療法としてのTC療法 高い奏効率示すもpCRは低率に

公開日時 2012/06/06 06:50

 

矢形寛氏エストロゲン受容体陽性・HER2陰性乳がんに対する術前補助化学療法としての、ドセタキセル+シクロホスファミド併用療法(TC療法)の有用性を43例、45病変を対象に検討したところ、73.3%と高い奏効率を示した。一方で、病理学的完全寛解(pCR)は1病変にとどまることも分かった。聖路加国際病院乳腺外科の矢形寛氏らが行った前向き研究である。6月1日から米国・シカゴで開催されている米国臨床腫瘍学会(ASCO2012)で、聖路加国際病院乳腺外科の矢形寛氏が6月2日、ASCO2012のGeneral Poster Session「Breast Cancer - HER2/ER」で報告した。

TC療法は、術後補助化学療法の標準治療の1つとして確立されている一方、術前補助化学療法としての有効性、特にホルモン感受性乳がんに対する効果についてのエビデンスは十分に構築されていない。矢形氏らは、手術可能なエストロゲン受容体陽性・HER2陰性の乳がんに対する術前補助化学療法の効果を前向きに検討した。

対象は、①エストロゲン受容体陽性(Allred score≧4)②HER2陰性(0、1+、or 2+ and FISH<2)③乳腺MRIにより腫瘤径2cm以上あるいは穿刺吸引細胞診やセンチネルリンパ節生検で臨床的リンパ節陽性と診断された――を満たす、未治療で手術可能、針生検により確認された浸潤性乳管がん症例。登録期間は、2009年3月~11年2月まで。

乳腺MRI撮影後、ドセタキセル75mg/m2+シクロホスファミド600mg/m2を3週間毎に4サイクル施行し、再び乳腺MRIを実施して外科手術を施行。必要に応じてセンチネルリンパ節生検あるいは腋窩リンパ節郭清を行った。その後、摘出病変の病理学的評価を行い、コア針生検によって浸潤性乳管がんと診断と判断できなかった症例(リンパ節転移は陽性)、HER2がICH法で2+だがFISH法評価がない症例、内分泌療法既施行例、他の化学療法施行例などを除外。最終的に43例の45病変で評価分析を行った。主要評価項目は、乳腺MRIによる臨床的奏功と病理学的完全寛解。

患者背景は、年齢(中央値)が47歳(34~70)。臨床的病期分類はstage IIAが21病変、stage IIB 24病変。核異型度はグレード1が31病変、グレード2とグレード3が各7病変。エストロゲン受容体のAllred scoreは4が2病変、6が3病変、7~8が40病変、プロゲステロン受容体のAllred scoreは0が3病変、3~4が5病変、5~6が6病変、7~8が31病変だった。MIB-1 indexは中央値が22%(6~71%)で、20%未満が14病変、20%以上30%以下が9病変、30%超が16病変で、測定不能が6病変。


◎核異型度とプロゲステロン受容体のスコアは改善傾向を示す

その結果、TC療法による効果は、完全寛解(CR)1病変、部分寛解(PR)32病変、不変(SD)12病変で、病勢進行(PD)例はなかった。病理学的にCRと判定された病変は、臨床病期分類でstage IIA、臨床奏功はPR、核異型度がグレード3、エストロゲン受容体のAllred scoreが8、プロゲステロン受容体のAllred scoreが3で、MIB-1 indexは32.6%だった。

TC療法後の各患者背景(44病変)は、核異型度でグレード1が40病変、グレード3が4病変。エストロゲン受容体のAllred scoreは0と4が各1病変、6が3病変、7~8が39病変、プロゲステロン受容体のAllred scoreは0~2が8病変、3~4が14病変、5~6が9病変、7~8が13病変だった。全体として核異型度とプロゲステロン受容体のスコアは改善傾向を示し、エストロゲン受容体スコアは治療前後で安定していたが、TC療法後に1病変だけがエストロゲン受容体スコア4からスコア0と変化した。

TC療法後の手術については乳房切除術が20例、乳房切除術+乳房再建術が4例、乳房部分切除術20例だった。


◎聖路加国際病院・矢形氏「予後改善度の評価や乳房温存術の向上には不適」


今回の結果から、エストロゲン受容体陽性・HER2陰性乳がんへの術前補助化学療法としてのTC療法の効果は、限定的で、予後改善効果の評価や乳房温存術の向上を目的に行うのは、適していないのだろうと感じています。もし高いpCRを得ようと思うならば、他のレジメンの開発が必要だと考えます。

エストロゲン受容体陽性・HER2陰性乳がんには、化学療法後に微小病変が点状に残存していることが多く、必ずしも乳房温存術には至りません。また、pCRが得られても必ずしも予後に反映されるわけではないことも分かってきました。より強力な術前補助化学療法で乳房温存術を目指すことは、症例によっては過剰治療になる恐れもあります。

その点では、今回の結果はネガティブデータとも言えますが、これまでエストロゲン受容体陽性・HER2陰性乳がんに対する術前補助化学療法に対するまとまったデータは少なく、今後の治療戦略を考える上で十分意義があったと考えています。

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