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中医協薬価専門部会では6月25日、2026年度薬価改定をめぐる議論を行い、論点の一つに「逆ザヤ問題」が浮上した。診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は逆ザヤが保険薬局経営に重くのしかかっていると指摘。逆ザヤをめぐる実態調査を行ったうえで、「薬価や流通上の対応を検討すべき」と強調した。厚生労働省医政局医薬産業振興・医療情報企画課の水谷忠由課長は「上流の仕切価のところから、どういう実態になるのか。それをどのように把握できるのか、関係者の協力をいただきながら検討する」と応じた。中医協薬価専門部会では、次回に予定される製薬業界からの意見陳述を踏まえて議論を進める方針。
◎どのような医薬品、メーカーで逆ザヤが生まれているか調査を 4月以降に逆ザヤ品が大幅増
逆ザヤ問題をめぐっては6月20日の「医療用医薬品の流通の改善に関する懇談会(流改懇)」で議論の俎上に上っており、これを踏まえた議論があった。
診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「以前から保険薬局における逆ザヤ現象があり、薬局にとっては非常に大きな課題だった。今年4月以降、直近の薬価改定の影響により、卸から保険薬局への納入価において逆ザヤとなる品目が大幅に増加しており、非常に困っているという現場の声が薬剤師会に多く寄せられている」と述べた。
そのうえで、流改懇の議論を引き合いに、逆ザヤの品目数が2割とも3割とも言われているとして、「逆ザヤの品目がここまで増えるということは、地域に根ざして日々頑張って地域医療に取り組んでいる保険薬局にとっては安定した医薬品の維持どころか、経営そのものが危ぶまれてしまうことになる」と強調。「本来であれば、逆ザヤ問題について、早急な対応をお願いしたいところだが、少なくとも次期薬価改定に向けた課題の一つとして捉えていただき、どのような医薬品、どのようなメーカーで逆ザヤが多く発生しているのか。また、購入先や販売先によって状況が異なるかどうかなどについて実態を把握できるよう調査いただき、それらも踏まえた上で、薬価や流通上の対応を検討すべき」との見解を表明した。
◎厚労省・水谷産情課長 流改懇で仕切価含めた実態把握は流改懇で異論出ずと説明
厚生労働省医政局医薬産業振興・医療情報企画課の水谷忠由課長は、「(流通当事者に)そうした実情があるということは、共通の認識だと受け止めている」と述べた。そのうえで、流改懇の議論を通じ、「私の方から業界の関係者に相談し、協力を仰ぎながら、仕切価等の実態把握の方法等について検討していきたいという旨を申し上げ、それについて特段の異論をいただいていないというふうに承知をしている」と説明。薬局だけでなく、医薬品卸からも同様の声があがっているとして、「まさに上流の仕切価のところから、どういう実態になるのか、それをどのように把握できるのか、関係者の協力をいただきながら検討してまいりたい」と応じた。
診療側の森委員は、「医薬品の逆ザヤ問題は、国民への医薬品供給で非常に大きな問題になると考えている。まずはしっかりと現状を把握、調査していただきたい」と強調した。
◎25年度薬価改定骨子や大臣折衝踏まえた26年度改定の主な課題示す
厚労省保険局医療課は24年度、25年度薬価改定の骨子や24年末の大臣折衝での合意事項、25年度の骨太方針を踏まえ、26年度薬価改定の主な課題を中医協に示した。24年度、25年度と2年連続薬価改定で、製薬業界の要望を踏まえて、創薬イノベーションと安定供給に向けた拡充がなされていることから、診療・支払各側から薬価改定の効果検証を求める声があがった。
◎診療・支払各側 薬価改定の効果検証求める 医薬品の安定供給やイノベーション
25年度薬価改定の骨子では、「創薬イノベーションの推進、医薬品の安定供給の確保、国民負担の軽減といった基本的な考え方を踏まえ、これまでの薬価制度改革の検証も行いつつ、26年度薬価制度改革に向けて検討を行う」とされている。このため、これまでの薬価制度改革の検証、イノベーションの適切な評価、医薬品の安定供給の確保などをあげた。
診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、24年度薬価改定、25年度薬価改定と2年連続で「医薬品の安定供給やイノベーションを理由として、業界が要望され、一定の評価がなされた。その結果、現在安定供給やイノベーションがどのような状況になっているのか、今後お示ししていただくようお願いする」と検証を求めた。
◎支払側・松本委員「カテゴリー別、踏み込んだ議論を」 業界主張のロス86品目の開発見通しも
支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「保険者としては、公的医療保険制度の持続可能性が前提」と述べたうえで、「薬剤負担のあり方についても意識をしながら、医薬品のライフサイクルに応じた薬価のあり方やカテゴリー別の対応について、より踏み込んだ議論をさせていただきたい」と述べた。
その際に、「24年度薬価制度改革の影響を丁寧に見極めることも必要」と指摘。24年度薬価制度改革では、製薬業界が86品目でドラッグ・ロスが生じていると主張し、結果的として特許期間中の薬価維持や迅速導入加算の新設など、薬価上のイノベーション評価につながった経緯がある。松本委員は、「例えば以前に業界から具体的にご紹介のあった国内未承認薬について、開発の見通しについても、ぜひ中医協でご報告いただきたい」と述べた。
◎支払側・鳥潟委員「25年度対応の薬価下支えの影響検証を」
支払側の鳥潟美夏子委員(全国健康保険協会理事)も、「ドラッグ・ラグ/ロスの解消、医薬品の安定供給確保は、24年度改定で評価した部分であり、昨年状況をうかがっているが、その後の影響や取り組み状況について引き続き確認をできればと思っている」と指摘。25年度薬価改定では、最低薬価の引上げや不採算品再算定の特例的な実施がなされたが、「25年度改定で対応した薬価の下支えも、どういった影響が及ぼされたのか確認できれば」と述べた。
◎中間年改定 大臣折衝踏まえ25年末までに長収品と市場拡大再算定の中間フォローアップ
主な課題の一つに、「診療報酬改定がない年の薬価改定」もあげた。24年末の大臣折衝で、「今後の診療報酬改定のない年の薬価改定についても、創薬イノベーションの推進、医薬品の安定供給の確保、国民負担の軽減といった要請についてバランスよく対応する中で、その在り方について検討すること」と明記。「長期収載品に係る内容については、後発医薬品の置換えの状況等について検証しつつ、さらなる長期収載品の薬価上の措置について検討する。また、診療報酬改定のある年にのみ適用されてきた市場拡大再算定についても、国民負担の軽減と創薬イノベーションの推進とのバランスを踏まえ検討する。これらの検討の状況について、25年末に中間的なフォローアップを実施し、その結果を公表する」とされているためだ。
支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「その都度議論するのではなく、一定の考え方を整理しておくことで、予見性も高まると思う。この点についても議論させていただきたい」と述べた。支払側の佐保昌一委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局長)は、「25年度改定では24年7月から議論を行ったが、あり方そのものを十分に検討する時間は足りなかったと思うので、今回しっかり議論していくべき」と述べた。
このほか、高額医薬品(感染症治療薬、認知症薬)における薬価算定方法、物価・賃金上昇への対応も26年度薬価改定の主な課題にあげた。
今後は業界の意見陳述を踏まえて7月から8月にかけて課題整理を行い、新薬、長期収載品、後発品などの各論を議論。薬価算定組織からの意見も聞く。その後、9月から11月にかけて、改めて業界の意見陳述を行い、対応の方向性について議論を深め、年末にかけて、薬価調査の結果の速報を踏まえ、最終的に薬価改定の骨子案をまとめる方針。
◎25年度薬価調査の実施を了承
同日の中医協総会では、25年度薬価調査の実施を了承した。通常改定年のため、販売サイドは全数、購入サイドは通常通りの抽出率で実施する。販売サイドは医薬品卸の営業所などは全数約6600客体が対象。購入サイドは、病院20分の1(約400 客体)、診療所200分の1(約530 客体)、保険薬局60分の1(約1050 客体)の抽出率で調査を実施する。調査期間は25年度中の1か月間。