武田薬品・ウェバー社長CEO 定時株主総会「25年は後期開発品3剤の上市に向け重要な年」とメッセージ
公開日時 2025/06/26 04:52

武田薬品のクリストフ・ウェバー代表取締役社長兼CEOは6月25日、大阪市内で開催した第149回定時株主総会で、「2025年は後期開発パイプラインの上市に向けた重要な年になる」と株主にメッセージを発した。Rusfertide(TAK-121)の臨床第3相試験結果が3月に発表されたのに続き、Oveporexton(TAK-861)の試験結果が今年上期に、Zasocitinib(TAK-279)の試験結果が下期に発表されることを株主に説明した。ウェバー社長CEOは、「パイプラインの進捗と成熟度において非常にエキサイティングな上市への投資になる」と強調。3製品のピーク時売上は100~200億米ドルを見込んだ。一方、ビバンセの米国特許切れに伴う影響も、「成長製品や新製品が牽引し、後発品によるビバンセの大幅な減少は25年度で終了する」と強調した。
「現在の(武田薬品を取り巻く)環境はポジティブな傾向とネガティブな傾向が混在しており、巧みな管理が必要だ」―。ウェバー社長CEOはプレゼン冒頭で、こう強調した。
「増大する医療コストを賄うことはますます難しく、そのため製薬業界への価格圧力が高まっている」とも指摘する。加えて、「最近は地政学的な分断がある」と指摘。トランプ関税や米国の薬価引下げ政策の行方とその影響について、「我々は、日米欧に跨るバランスのとれたグローバルな製造拠点があるため、関税の影響は限定的」としながらも、「他の革新的な製薬会社と同様に、我々も依然として価格上昇圧力に大きく晒されている」と述べ、「こうした課題が過去2年間、製薬業にかなりのプレッシャーをかけてきた点を認識することが重要」との見解を示した。
◎DD&T、そしてAI活用で「あらゆるやり方を変革、洞察の探求や効率化を進める時代」

一方で、「科学技術の革新は、息をのむスピードで進み続け、様々な形で人々の健康を改善する驚異的な可能性が開かれている」と指摘。「データ・デジタル&テクノロジー(DD&T)、そしてAIを活用し、あらゆるやり方(手法)を変革し、洞察の探求や効率化を進める時代にいる」と述べ、株主に理解を求めた。なかでもDD&Tの社内活用についてウェバー社長CEOは、従業員が自身の成長やキャリアの新しい機会を見つけられる「キャリアナビゲーター(Career Navigator)」というAI搭載の人材マーケットプレースプラットフォームを導入したと述べ、「働き方が劇的に変化していることを社員が認識し、変化する働き方の環境に適応するため、柔軟な働き方を積極に取り入れている」と明かした。
◎「チャンスは中国」 今や中国はバイオ医薬品のイノベーションの源泉
ウェバー社長CEOはまた、「チャンスは中国」と強調。「今や(中国は)バイオ医薬品のイノベーションの源泉として、より重要な存在になりつつある」と述べ、「中国での研究開発には、臨床試験の迅速な登録やコスト削減など、研究戦略の一環として活用したいメリットがある」と期待を寄せた。また、株主との質疑においてウェバー社長CEOは、「中国政府がヘルスケアを優先化しており、保険償還システムを完全に変えた。現在は新薬が承認されれば保険償還できるようになった。よってこの5年間で中国は大きく転換してきた」と述べた。
◎「フューチャー・キャリア・プログラム」についてタケダOB株主が質問
定時株主総会の質疑では、JPBUの全組織と日本のR&D部門の従業員を対象に実施した「フューチャー・キャリア・プログラム」(希望退職・転進支援プログラム)について、「680人も削減して人材育成への配慮がちょっと欠けているのではないか」との質問がタケダOBの株主からあがった。
これに対しウェバー社長CEOは、「我々も難しい選択を迫られている。ただ、新しい環境に適応していくことが必要だ。コロナ以降、(MR活動においても)ドクターとの面談は大きく変わった。バーチャルが増えている。私もMRからスタートしているので、おっしゃることは非常によくわかる」と述べ、さらに、「ポートフォリオも変わってきている。医薬品はもっと精緻に標的を絞った形で開発されるようになってきた。治療対象も小さくなってきている。なので、再編が必要な時もある」と強調した。
◎次期社長CEO候補のジュリー・キム氏が挨拶 「今後の発展に私自身も胸を躍らせている」

この日の定時株主総会では、2026年6月の定時株主総会において新任取締役候補者として提案する予定のジュリー・キム氏が挨拶した。キム氏は26年6月で退任するウェバー社長CEOの後継者候補。キム氏は、「前身の組織を含め、24年間という長きにわたり、武田薬品に携わってきた。武田薬品の今後の発展に私自身も胸を躍らせている。そして、皆様も同様に期待を寄せてくださっていることを切に願っている」とスピーチした。なお、キム氏は現在U.S.ビジネスユニットのプレジデントを務めている。