予防医療に手厚いオバマケアの全面施行により、米国民もほぼ全員が 毎年一度の定期健康診断を受診するようになった。だが、定期健康診断は有効なのか？本当に毎年必要なのか？評価は必ずしも定まっていない。（医療ジャーナリスト　西村由美子）


BMJ (British Medical Journal) に掲載された英国の調査報告（国が実施する年次定期健康診断には受診者の不安を軽減して医療機関受診回数を減ずる効果はなく、むしろ逆に不要な検査や治療を増加させる）が米国で議論を喚起している。

http://bmjopen.bmj.com/content/5/4/e007578.full　


「健康診断を受診せず、病気になった時だけ医師にかかるのでは意味がない」と言うのはハーバード大学の内科医Dr. Pieter Cohenだ。「正しい診断を下すには患者の日常の様子がわかっていることが大事」だと。


「受診頻度の高くない患者にとって、定期健康診断は医師と常用薬などについて話し合う絶好の機会」と積極的に評価するのはニューヨーク大学のDr.David Hammelsteinだ。 自身のかかりつけ医に定期健康診断をしてもらうのが原則の米国ならでは、である。


だが「健康診断の内容には大いに見直すべき余地がある」とDr. Cohenは言う。「現在の健康診断項目は、往々にして保険からの支払い償還がされる項目を並べているだけ。プライマリケア医が本当に必要としている項目が必ずしも網羅されていない」からだ。ソリューションは「定期健康診断を実施するかしないか、ではなく、どのような内容の健康診断にするか」で、「大いに改善の余地がある」。


”医療の質を評価する”と標榜しているオバマケア。実際にもさまざまな政策項目についてデータ解析に基づく実証評価をはじめている。定期健康診断についても費用対効果を米国独自のデータから検証する日が遠くないと思われる。