塩野義製薬 JT傘下の鳥居薬品の買収を決議 買収総額は約1600億円規模 JTは医薬事業から完全撤退へ
公開日時 2025/05/07 16:40
塩野義製薬は5月7日の取締役会で、日本たばこ産業(JT)傘下の鳥居薬品の買収を決議した。同社の全株式をTOB(公開買付け)で取得する。
TOBに加えてJTの米孫会社を含めた買収総額は約1600億円規模。鳥居薬品も同日の取締役会で、公開買付けに賛同する意見を表明し、株主に対し応募することを推奨する旨の決議を行った。これにより鳥居薬品は塩野義製薬の完全子会社となる。一方で日本たばこ産業も同日の取締役会で同社の医薬事業について塩野義製薬への承継を決議した。これにより医薬事業から撤退することになる。
◎JTの医薬事業を会社分割により承継 米孫会社の株式譲受に関する合意書も締結へ
塩野義製薬は同日の取締役会で、日本たばこ産業(JT)の医薬事業を会社分割(簡易吸収分割)により承継することおよび米国グループ会社 Shionogi Inc.による日本たばこ産業の100%孫会社であるAkros Pharma Inc.の発行済株式全部の譲受に関する合意書を締結することを決議した。同時に日本たばこ産業の連結子会社である鳥居薬品の完全子会社化を目的として、鳥居薬品の普通株式に関するTOBの実施についても決議した。
一方、日本たばこ産業(JT)も同日取締役会を開き、医薬事業の塩野義製薬への承継に関する合意書を締結することを決議した。これにより日本たばこ産業(JT)の事業ポートフォリオは、たばこ事業と加工食品事業の2つとなり、医薬事業から撤退する。
◎事業シナジー ①国内事業の強化、②グローバル展開の加速、③柔軟な製造/販売体制の実現
塩野義製薬は今回TOBを実施する背景ついて、「2024 年8月上旬に日本たばこ産業および鳥居薬品に対して、公開買付者による JT 医薬事業の吸収分割による譲受および本取引に関する提案を実施した」と説明。事業シナジーとして、①国内事業の強化、②グローバル展開の加速、③柔軟な製造/販売体制の実現―をあげている。
◎製品の価値最大化 シナジー効果に期待 鳥居薬品の営業力で皮膚科、小児科、耳鼻科に拡がりも
このうち国内事業については、塩野義製薬と鳥居薬品の「異なる強みが統合され、情報提供の範囲が広がり、かつ医師のニーズにあった適切な情報提供が実現することで、特に一定のシェア・オブ・ボイス(SOV)を必要とする製品においては価値最大化の観点でのシナジー効果が発揮される」と強調。塩野義製薬の強みであるCOVID-19、インフルエンザに対する抗ウイルス薬の情報提供も、「鳥居薬品が強い営業力を持つ皮膚科、小児科、耳鼻科での情報提供が加わることになる」と期待感を示している。
グローバル展開についても、「将来の開発パイプラインについてグローバル展開の可能性が高まり、国内外での研究開発・販売データの収集及び評価を積み重ねることで販売強化につながる」と指摘。塩野義製薬が積極的に取り組んでいる「導入品候補の探索活動及び事業投資活動においても、鳥居薬品のネットワークや専門知識を有している人材を活かすことでさらに効率的かつ有効な活動が展開できると考えている」とした。
【おことわり】買収総額について表記を修正しました。(5月7日21時)