ヴァンティブ 宮崎市と災害時包括連携協定を締結 締結式で河野社長「災害時の腹膜透析の利点強調」
公開日時 2025/08/08 04:52

ヴァンティブは8月7日、宮崎市と災害時における包括連携協定を締結した。同社の宮崎工場で行った締結式で河野行成代表取締役社長は、「災害時にも宮崎市の方々に寄り添いながら、ヴァンティブとしてできることをしていきたい」と述べた。また、注力する腹膜透析について、水や電気を必要とせずに自宅や避難所で行える利点に触れ、「患者さんのライフスタイルに寄り添い、災害への備えにもつながる治療。いつでも安心して利用いただける環境を提供していきたい」と訴えた。
◎災害時に生活物資やインフラを提供 仮設住宅用地も盛り込む
ヴァンティブ宮崎工場は透析治療製品の製造を行っている。工場は、高台の強固な地盤に建っており、災害時にはテニスコート690個分の敷地や飲料水618トン、ソーラー発電による700kwの電気などが提供可能。協定では、災害時に生活物資・インフラを提供することや、仮設住宅用地としてのスペースの提供などを盛り込んだ。南海トラフ巨大地震など災害への備えが求められる中、宮崎市の清山知憲市長は「水や電気、トイレだけでなく広大な敷地を活用させていただけるのは、大変ありがたい。有事の際には市民生活の復旧・復興に協力していきたい」と歓迎した。
◎熊本赤十字病院・川端医師 熊本地震踏まえ「腹膜透析は災害に強い」

締結式では、災害時における透析治療をテーマに地元医師とのトークセッションも行った。宮崎県立宮崎病院腎臓内科部長の池田直子医師は、治療の意思決定においてシェアードデシジョンメイキング(SDM、共同意思決定)の重要性が増していると指摘した上で、「患者さんにとってより良い医療、納得できる医療を提供することが大切。腹膜透析は通院回数も少なく、自宅で透析を行うことができ、家族と一緒に過ごすことを望む患者さんの願いを叶えるには一番の治療法ではないか」と述べた。
2016年の熊本地震を経験した熊本赤十字病院腎臓内科副部長の川端知晶医師は、当時を振り返りながら災害時の透析治療について紹介した。発災当時、熊本県内の血液透析施設93施設のうち、27施設で透析が行えない状況になった一方で、腹膜透析の場合は患者約200人のうち、約9割が自宅や避難先での透析を行うことができたという。川端医師は「腹膜透析はライフラインを使わずに患者さん自身ができる治療で災害にとても強い。熊本地震を通じて命を守る備えとしての利点をより実感した」と強調した。