住友ファーマ・木村社長 国内申請中のiPS細胞由来製品「世界で最初のiPS製品になる可能性が非常に高い」
公開日時 2025/08/07 04:53

住友ファーマの木村徹代表取締役社長は8月6日に東京で開いた会見・記者懇談会で、国内申請したパーキンソン病に対するiPS細胞由来製品・ラグネプロセルについて、「iPS細胞由来製品として、おそらく世界で最初の製品になる可能性が非常に高い」との認識を示した。2025年度中に承認を取得して「しっかり患者さんに届けられるようにする」と強調し、全力で当局対応していく意向を示した。承認の枠組みは「おそらく条件及び期限付き承認になる」と指摘。その後の本承認の取得に向けた市販後の臨床試験デザインについて、「申請前の段階からPMDAと相談を進めており、現在、詳細の詰めに入っている」と明らかにした。
住友ファーマは5日に、パーキンソン病に対する非自己iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞・ラグネプロセル(国際一般名、開発コード:CT1-DAP001/DSP-1083)を日本で承認申請した。この申請は、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)が京都大学医学部附属病院と連携して実施した医師主導治験のデータに基づく
(記事はこちら)。同治験では7人のパーキンソン病患者を対象にラグネプロセルを脳内の被殻に両側移植した。その結果、重篤な有害事象は発生せず、iPS細胞由来のドパミン神経前駆細胞は生着し、ドパミンを産生することなどが確認された。
ラグネプロセルは厚労省から先駆け審査制度の指定を受けており、優先審査される。
◎「iPS細胞由来製品をしっかり患者さんに届けられるように進めていきたい」
木村社長は、iPS細胞由来製品の申請に至った感想を聞かれ、「我々としても10年来、京都大学を中心に、長期間かけて開発してきた。新型コロナなどいろいろあったが、ようやく申請にこぎつけた。一つのマイルストーンを達成した」と振り返った。ただ、「申請しただけで、承認をとれたわけではない」とも強調し、「iPS細胞由来製品をしっかり患者さんに届けられるように進めていきたい」と気を引き締めた。
承認取得に向けた審査のポイントに関しては、「ひとつはCMCだと思う」と即答。「製法あるいは製品の品質保証をしっかりできる体制ができているか」が承認取得のカギをにぎるとの見方を示した。さらに、承認スキームが「条件及び期限付き承認になる」との見通しを示した上で、「本承認を目指してどのような臨床試験を組むか。プライマリーエンドポイントを含めて、ここも一番のポイントになる」と指摘し、PMDAと相談を進めていることを明かした。条件及び期限付き承認品はこれまで2製品あったが、市販後に有効性を検証できず、本承認に至った例はまだない。
◎iPS細胞由来製品の薬価 有効性、製造コスト、開発コストなど踏まえて決定を
iPS細胞由来製品の薬価や治療費がどの程度になるかの関心も高い。これに木村社長は、「薬価は我々が決めるわけではない」とした上で、「有効性、製造コスト、開発コストなどを踏まえて決めていただけるよう働きかけたい」と語った。さらに、「(パーキンソン病に対する)iPS細胞由来製品として、おそらく世界で最初の製品になる可能性が非常に高い。今回、うまくいかないとなれば、この領域(=iPS細胞由来製品)の夢なり可能性が頓挫することになる」と指摘し、住友ファーマとしても承認取得及びその後の薬価算定に向け、全力で当局対応していく意向を示した。
木村社長は、iPS細胞由来製品による治療アクセスとコスト負担の考え方にも言及した。「我々としては、日本のフルカバーの保険システムにのせることが最も広く普及させる方法だと考えている」と話すとともに、高度な医療を求めて来日するメディカルツーリズムを念頭に、「海外の方にはそれなりの価格で(iPS細胞由来製品による)治療を受けられることを併存して進める」ことも一案だと語った。日本における承認審査のデータがアジアや中東などの諸外国でも使える仕組みが機能すると、「日本の製薬企業としては非常にありがたい」、「また違った展開があるのではないか」とも述べた。
◎オゼンピックの情報活動に医師 「住友がこの市場に帰ってきたかと、非常に好意的に受けとめ」
このほか木村社長は会見で、国内事業に関し、ノボ ノルディスク ファーマが製造販売する2型糖尿病を効能・効果とする週1回投与のGLP-1受容体作動薬・オゼンピック皮下注のコ・プロモーション(共同販促)を7月から開始したことを報告した。住友ファーマは22年12月までオゼンピックの競合品であるトルリシティを取り扱い、25年7月からオゼンピックを取り扱うことになった。木村社長は、「当社はかつてトルリシティでGLP-1受容体作動薬市場を切り拓いた。医師の間では、住友がこの市場に帰ってきたかと、非常に好意的に受けとめていただいている」と医師の受けとめを語った。
オゼンピックを手掛けることで住友ファーマが注力している2型糖尿病治療薬のツイミーグやメトグルコとのシナジーが期待できると説明。「より幅広い治療提案が可能になることで、個別化医療の推進に貢献できる」と述べた。