〈SPS3〉ラクナ梗塞の二次予防 長期抗血小板併用療法の有用性示せず (2/2)
公開日時 2012/08/01 04:00
The University Of British Columbia
Professor&Research Director of Cerebrovascular Health and Stroke
Oscar Benavente氏に聞く
米国やカナダのGLをサポートする結果
ラクナ梗塞は、アメリカでは、ヒスパニックや黒人に患者が多い、非常に一般的な疾患です。日本人を含めたアジア人ではさらに、一般的な疾患だと思います。発症率については、人種差がある可能性もありますが、血圧管理が発症率に影響している可能性もありますね。
ラクナ梗塞は、脳梗塞の再発だけでなく、痴呆をはじめ、認知機能障害との関連性も指摘されており、脳卒中の再発を抑制するストラテジーを確立できることが重要だと考えています。この観点から、我々は、MRI所見に基づき、ラクナ梗塞ときちんと定義された患者を対象に、脳卒中の再発予防における基盤となる戦略を構築することを目的に、研究を始めることとしました。
我々が試験を開始した2001年には、アスピリンとクロピドグレルの併用療法の有用性が大規模臨床試験でも示されるようになってきました。「CURE(Clopidogrel in Unstable Angina to Prevent Recurrent Ischemic Events)」試験では、併用療法はアスピリン単剤に比べ、心血管イベントの発症抑制効果で勝ることも報告されていました。そこで、我々は抗血小板療法の強さと、イベントの減少効果は強く相関していると考え、強力な抗血小板療法の有用性を検討しました。
しかし、試験結果では、併用療法群とアスピリン単剤群の間に主要評価項目の脳卒中の再発率では有意差がみられませんでした。一方で、大出血は、併用療法群で有意に増加しましたが、併用療法で増加した大出血は多くが非中枢性でした。私は多くの出血が、胃腸出血であると考えています。
この試験の結果から言えるのは、①試験が併用療法での優越性を示すことを失敗したこと②予想しなかったことに併用療法で死亡率が増加し、同時に出血も増加したこと――の2点です。ただし、頭蓋内出血については、有意差は認めませんでした。
降圧療法群の結果に期待
この試験から言えるのは、ラクナ梗塞患者の脳卒中の再発予防として、アスピリン+クロピドグレルの併用療法を長期間行うことは推奨できないということです。米国やカナダのガイドライン(GL)では、アスピリン単剤、クロピドグレル単剤、アスピリン+ジピリダモールが推奨されており、アスピリン+クロピドグレルの併用は推奨されていません。試験結果は、GLの推奨をサポートするものだと考えます。
予想に反して死亡率が増加した点については、今後さらなる検討が必要ですが、血管イベントが影響した可能性はあると考えています。small vessel diseaseについては、降圧療法、抗血小板療法、脂質低下療法を多面的に行うことこそがベストストラテジーだと考えています。降圧療法については、降圧目標を含め、今後明らかになるSPS3試験の血圧についての解析で明らかになることに期待しています。