【MixOnline】パンくずリスト
【MixOnline】記事詳細

知財高裁 東レのレミッチOD錠の用途特許侵害訴訟 沢井製薬に142億円、扶桑薬品に74億円の賠償命令

公開日時 2025/05/28 04:52
東レが沢井製薬と扶桑薬品を相手に提起していた経口そう痒症改善薬・レミッチOD錠(一般名ナルフラフィン塩酸塩)の用途特許侵害訴訟で、知的財産高等裁判所は5月27日、東レ側の主張を認め、沢井製薬と扶桑薬品に賠償金などの支払いを命じた。知財高裁は賠償金として沢井製薬に対して142億9093万9291円、扶桑薬品に対して74億7287万8838円、及び遅延損害金の支払いを命じた。沢井製薬の親会社のサワイグループホールディングス(GHD)と扶桑薬品はこの日、判決は到底容認できないと反発。サワイGHDは「速やかに上告を含むあらゆる法的手段を講じる方針」、扶桑薬品は「最高裁へ上告する準備を進める」とのコメントを発表した。

東レは、レミッチに係る20年間の特許期間が満了する2017年に、用途特許の5年間の延長登録を申請した。延長登録は、医薬品の開発において製造販売承認を受けることが必要であったために特許発明の実施をすることができなかった期間を回復することを目的として、その期間について、20年の特許期間満了後に5年を上限として、存続期間の延長を認める制度のこと。延長登録の出願中は特許期間が延長されたものとみなされる。

一方、18年6月に10社11品目のレミッチ後発品が薬価収載・発売された。このうち同後発品のOD錠は沢井製薬と扶桑薬品の2社が取り扱ったが、東レは18年にこの2社を相手に特許侵害訴訟を提起した。この2社にしぼって提訴した理由について、東レは本誌取材に、「(レミッチのカプセル剤とOD錠のうち)OD錠の販売割合が高く、その後もOD錠に集約されると考え、(沢井製薬と扶桑薬品の)2社を提訴した」と説明した。

そして、21年に東京地裁が東レの請求を棄却する判決を出したが、東レはこれを不服とし、知財高裁に控訴していた。東レによると、知財高裁は「沢井製薬、扶桑薬品による沢井製品、扶桑製品の本件特許権(=レミッチOD錠に関する用途特許)存続期間中の製造販売行為が本件特許権の侵害にあたると認定され、東レの損害賠償請求を認め」たとした。

また、「血液透析患者、慢性肝疾患患者におけるそう痒症の改善(既存治療で効果不十分な場合に限る)」に係る用途特許の延長(特願2017-700154号)の維持審決に対し、沢井製薬が審決取消訴訟を提起していたが、知財高裁はこの日、沢井製薬の請求を棄却し、特許延長を維持する判決も言い渡した。

なお、延長された用途特許は22年11月に満了しているため、現在は同後発品OD錠を製造販売することの問題はない。

◎サワイGHD 「当社の主張を著しく無視したもので、到底容認できるものではない」 あらゆる法的手段講じる

サワイGHDは知財高裁の判決を受け、「当社としては、本判決の内容は当社の主張を著しく無視したものであり、到底容認できるものではない。このため、判決内容を精査のうえ、速やかに上告を含むあらゆる法的手段を講じる方針」とのコメントを発表した。業績に与える影響は「精査中」だが、5月14日に発表した24年度業績を修正する予定だとしている。

◎扶桑薬品 「到底承服できかねる」 最高裁への上告を準備

扶桑薬品もコメントを発表。「控訴審における請求金額の大半を認容する判断がなされたことは誠に遺憾であり、当社のこれまでの主張に照らしあわせると到底承服できかねる」とし、「本判決の内容を早急に精査し、最高裁判所へ上告する準備を進める」とした。また、訴訟関連損失引当金繰入額74億7287万8838円及びこれに対する遅延損害金を25年3月期の特別損失として計上する予定であることも明らかにした。
プリントCSS用

 

【MixOnline】コンテンツ注意書き
【MixOnline】関連ファイル
【MixOnline】記事評価

この記事はいかがでしたか?

読者レビュー(7)

1 2 3 4 5
悪い 良い
プリント用ロゴ
【MixOnline】誘導記事
【MixOnline】関連(推奨)記事
【MixOnline】関連(推奨)記事
ボタン追加
【MixOnline】記事ログ
バナー

広告

バナー(バーター枠)

広告

【MixOnline】アクセスランキングバナー
【MixOnline】ダウンロードランキングバナー
記事評価ランキングバナー