がん診療連携拠点病院の医師の６割強が、勤務環境の改善（＝働き方改革）に向けて、タスク・シフト/シェアに「期待」している――。医療情報サイトを運営するケアネットがまとめた調査のうち、がん診療連携拠点病院の医師約800人の回答からわかった。タスク・シフト/シェアを進めやすい職種は上位から医師事務作業補助者、看護師、看護補助者、薬剤師。ただ、タスク・シフト/シェアを推進する上での課題や懸念の１位は“院内ルールの未整備”、２位は“他職種も多忙”となっており、医師の働き方改革に伴うタスク・シフト/シェアが多くの病院に浸透するには時間がかかりそうだ。

◎働き方改革の実際の取組み　１位は「当直明け勤務者への配慮」

2024年４月に施行された医師の働き方改革の勤務先での状況は、「施行前より取組み実施」が34.0％、「施行にあわせ取組みが開始」が40.4％で、７割強の勤務先で働き方改革に取り組まれていた。この７割強の医師に実施中の取組内容を聞いたところ、１位は「当直明け勤務者への配慮」（58.9％）で、まずは勤務時間そのものの改革に着手したことがうかがえた。

働き方改革の取組内容の２位は「チーム医療（業務分担・連携の強化等）」（40.7％）、３位は「補助職（医師事務作業補助者等）の配置」（35.9％）、４位は「他職種連携（タスク・シフト/シェア）」（34.1％）――だった。「複数主治医制の導入」は23.2％にとどまり、患者説明のばらつきや患者から責任者が見えにくいといった指摘が寄せられた。

◎働き方改革に伴うタスク・シフト/シェア　「期待しており実施中」は30.6％　「期待しているが未実施」は33.5％

働き方改革を推進する上でカギをにぎるとされるタスク・シフト（医師の業務を他職種に移管すること）やタスク・シェア（医師の業務を複数の職種で分け合うこと）にフォーカスした調査結果を見てみる。

がん拠点病院の医師805人のうち、タスク・シフト/シェアに「期待しており実施中」は30.6％、「期待しているが未実施」は33.5％で、医師の約64％がタスク・シフト/シェアに「期待」していることが確認できた。「実施中だが期待なし」は18.6％だった。

タスク・シフト/シェアを進めやすい職種は、群を抜いて多かったのが「医師事務作業補助者」で医師の７割強が挙げた。これに次ぐのが医師の４割強が挙げた「看護師」で、「看護補助者」や「薬剤師」が続いた。実際に薬剤師にシフト/シェアした業務は 「病棟等における薬学的管理等」業務が最も多く、薬剤師による処方提案も「以前より積極的に実施」、「増えてきている」との状況も確認できた。看護師にシフト/シェアした業務としては「特定行為（38行為）」、「プロトコールに基づく薬剤投与、採血・検査」、「注射、採血、静脈路の確保等」の各業務が多かった。製薬企業には医師を中心とした情報提供活動から、タスク・シフト/シェアされた医療スタッフへの情報提供も展開する必要がありそうだ。

ただ、がん拠点病院の医師にタスク・シフト/シェアを推進する上での課題や懸念を複数回答可で聞いたところ、上位３つは「院内ルールの整備が必要」（44.3％）、「他職種もすでにギリギリの状態でシフトできる状態ではない」（41.0％）、「スタッフの教育が必要でそのコストがかかる」（31.6％）――だった。多くの医師がタスク・シフト/シェアに期待を寄せたが、シフト/シェアできる環境にある施設は現時点では限定的だということもこの回答結果から見えてくる。

ケアネットは、医師の働き方改革の取組み状況を把握するため、200床以上の病院に勤務しているケアネット会員医師を対象に意識調査を実施した。調査期間は24年12月４日～６日。有効回答は1540人で、このうちがん診療連携拠点病院勤務の医師は805人だった。なお、調査結果は「ケアネット診療白書 医師の働き方改革サーベイ2024冬」としてまとめている。