三好昌武シニアアナリスト 中堅製薬企業は「限界の一歩手前」
公開日時 2006/06/21 23:00
メリルリンチ日本証券調査部の三好昌武シニアアナリストは6月21日、医薬ラ
イセンシング協会が開いた月例会で講演し、中堅製薬企業の2000年度~05年度
までの直近の収益状況に関して「収益性の面ではジェネリックメーカー4社の
ほうが上回っている」と分析したうえで、「限界の一歩手前に来ている」と懸
念を示した。今後の生き残り策として「大胆な戦略構築、自社新薬依存からの
脱却が必要」と述べ、「Research&Development」から、米フォレスト・ラボ
ラトリーズやKOSファーマのような「License&Development」に転換する選択
肢もあると語った。
三好氏は、国内中堅製薬企業7社(科研、持田、杏林、キッセイ、ゼリア、日
本新薬、日研化学)の過去10年間の収益変動(平均値)を分析した結果を紹介。
05年度の業績を見ると、10年前に比べ、売上高はゼロ成長(578億円→618億円)
の中で、売上総利益も低下(350億円→346億円)し、営業利益は32%低下(70
億円→48億円)したと紹介。「売上高が伸びない中で販売促進費を削って、研
究開発費を捻出している状況」と分析した。
対照的にジェネリックメーカー4社(沢井、東和、ケミファ、日医工)の過去
10年間の収益変動を見ると、「95年度から2000年度までは売上高も営業利益も
減少していたが、00年度から5年間は、売上高(165億円→239億円)、営業利
益(14億円→27億円)ともに成長を遂げている」とし、「収益性の面から言う
と、既にジェネリックメーカーのほうが中堅企業よりも上回っている」と話し
た。
新薬の上市状況を見ても、中堅製薬企業11社では「96年を境にパタリと自社創
製品が出なくなった。05年までに大鵬薬品のTS1、協和発酵のアレロック、杏
林製薬のガチフロキサシン、大正富山医薬品のパシル、キッセイ薬品のグルフ
ァストの5品目しか発売されていない」とし、開発が進んでいないとした。
「承認申請中やフェーズ3の品目はあっても、せいぜい1社2品目程度。ゼロ
の会社もある」と問題点を指摘。
三好氏は「これらの企業の経営状況を見ると、収益状況は猶予がなくはないが、
限界の一歩手前に来ている。一発新薬が当たればという可能性は限りなく低下
している」と語った。中堅企業では選択と集中(創薬領域)や収益多様化(ラ
イセンシング、GE積極化)の方策も一部みられるが「スピードに欠ける」と問
題視。
さらに「基本的にはみな同じビジネスモデルであり、誰もまだ経営大変革を実
践しようとしていない」と苦言を呈し、大胆な経営戦略構築を行うことを提案。
▽落穂拾い(他社品のライセンスインでポートフォリオを補っていく)▽ニッ
チへの大転換▽顧客密着型(多様化するユーザーへの対応)▽パワージェネリ
ック(思い切ったジェネリック事業の推進)▽ディジーズ・マネジメント(診
断薬や検査薬も薬剤と併せて開発する)――の5つの選択肢を挙げた。