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京都大・川上教授 IND導入で新薬治験一部省略、承認の早期化可能

公開日時 2011/02/24 04:01

臨床試験の成果を早期に新薬、新医療機器の実用化に結びつけるために必要な取り組みを話し合うシンポジウムが2月23日、東京都内で産学官の識者の参加を得て行われた。法規制がないまま実施されている臨床試験の結果はたとえ成果が上がっても、国への承認申請に活用できない。そこで全ての臨床試験をGCPに準拠することを義務づけることで、被験者の保護とともに、申請に活用できるようにする必要性が指摘された。

シンポジウムのテーマは「真に必要な医療・医薬品を享受するために」で、内閣府経済社会総合研究所の主催で行われた。欧米では承認前の薬剤を投与する臨床試験はICH-GCPに準拠した形で行うことが義務付けられ、米国ではIND(Investgational New Drug application)をFDAに申請し、審査を受けなければならない仕組みになっている。

元FDA審査官で京都大学医学研究科の川上浩司教授は、日本へのIND制度の導入を訴え、同制度の開発、製品上市後の影響を見た研究結果を紹介。日本発の国際的新薬で関節リウマチなどの治療薬トシリズマブ(製品名アクテムラ、中外製薬)を例に、IND制度を導入した実施した場合に辿ったとみられる開発過程をモデル化したところ、当初大学などで実施された臨床試験を申請資料に活用することで、実際の開発過程で実施されたフェーズ1を省略できる可能性を示唆。その結果、実際より承認時期を約2年前倒しでき、その間に100億円を売り上げられたとの試算を示し、規制を受けない臨床試験が新薬開発にマイナスであることを指摘した。

千葉大・黒川教授 「INDは具体化の時期に来ている」

元厚生労働省大臣官房審議官で千葉大学大学院薬学研究院の黒川達夫客員教授は、規制を受けない臨床試験は、患者の協力を得て行っているにもかかわらず、質的にもバラバラで、成果もあやふやか還元が限定的であることを指摘し、倫理的に問題であるとともに、人的・経済的なコスト上の無駄であると強調。IND制度の導入の必要性を示した。

黒川教授は、政府の総合科学技術会議がIND制度の導入を検討し、その実施を求める答申書を10年12月にまとめていることを挙げ「IND制度は具体化するフェーズにきている」と主張し、導入までのプロセスを提案。それによると▽IND導入のメリット・デメリットの正確な評価▽FDAの経験を整理▽医療従事者、患者、産業界、教育界の合意--をまとめたうえで、立法・行政へ提示。その上で▽行政が積極的に動く環境をつくるため、政治的コミットメントを得る▽設立に向けて動く部署をつくる▽行政による制度設計▽財政的裏付けを確保する--との道筋を示した。

同教授は「IND制度は先進国が共通して導入しており、日本だけが独特の臨床試験となっている。しっかりINDを導入することが、次の改革の道につながる」と述べ、この問題への行政・立法の積極的な参画を求めた。

経済産業省出身で、現在内閣官房イノベーション推進室の八山幸司企画官は、川上教授が示した試算など「必要性やメリットを分かりやすく訴えることが必要」と述べるにとどまった。
 

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