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small vessel disease病態を見極めた治療選択を

公開日時 2012/08/01 04:00

岩手医科大学内科学講座 神経内科・老年科分野 教授
寺山靖夫氏に聞く

 

ラクナ梗塞やBAD(branch atheromatous disease)、無症候性脳梗塞などを包括する“small vessel disease”という疾患概念。この病態をいかに理解し、治療につなげていくべきか。岩手医科大学医学部内科学講座神経内科・老年科分野教授の寺山靖夫氏に、最新の知見を踏まえたお話を伺った。

 

脳卒中治療は、内科的治療の確立とともに、再生医療やインターベンションの分野に脚光が当たっているという印象を受けています。内科的治療は、t-PAの有用性をめぐる議論も少し落ち着き、その上にさらにインターベンションや抗血小板薬を組みあわせるかということに焦点が当たっているのではないでしょうか。


疾患概念では、small vessel diseaseをめぐって新たな考え方もでてきています。日本では、MRIの普及を背景に、BADやラクナ梗塞などの概念も広まっており、2つに病態的な違いがあることも分かってきました。逆に、small vessel diseaseという概念から見ると、穿通枝領域の病態には、明らかに内皮細胞の肥厚と皮薄化による硬化性病変という2つの相反する病態が含まれているということになります。つまり、1つの疾患概念の中に、異なる病態が含まれている可能性があるのです。


病理学的な診断は、歴史的には当然のことながら最初は剖検に基づいて行われていました。しかしその後、CTやMRIなどの画像診断の普及とともに剖検例は極度に減少してしまいました。CTやMRIの所見はあくまで、サロゲートマーカーに過ぎませんから、剖検と突き合わせた検討がなければ、画像診断は結果として独り歩きしてしまう危険性をはらみます。特にラクナ梗塞やBADのウラにひそむ病態は、MRIなどによる画像所見と剖検所見をしっかり突き合わせて検討すべき分野です。


small vessel diseaseという概念は皆がこの点について反省し、原点に戻って考えることを提唱していると思います。



何を指標として理解すべきか再考を


このような中にあって、small vessel diseaseの診断の分野でも画像診断に加え、微量アルブミン尿やシスタチンCなどの生化学的マーカーを用いた診断法も注目されています。これは、慢性腎臓病(CKD)と脳血管疾患、特にsmall vessel diseaseとの関連を示唆する重要な所見であり、脳の穿通枝動脈が腎臓の糸球体動脈と病理学的にも生化学的にも似通っている可能性が指摘されています。


今回、CanadaのOscar Venabente教授が中心になって行われたSPS3研究の中間報告が行われましたが、この研究ではラクナ梗塞などの小梗塞をsmall vessel diseaseとしてとらえて、この疾患の発症を予防するための至適血圧レベルの検討を行っているのと同時に、small vessel diseaseの病態をさらに追及していくことの必要性を訴えています。

 

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