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【ESC特別版】PROTECT ゾタロリムス溶出ステント ステント血栓症抑制でシロリムス溶出ステントと有意差示せず

公開日時 2012/09/03 06:00

 冠動脈病変を有する患者において、ゾタロリムス溶出ステント(ZES、Endeavor)とシロリムス溶出ステント(SES、Cypher)の治療成績を比較した結果、3年後のステント血栓症の発生率は同程度であることが分かった。ZESとSESの治療成績を直接比較検討した「PROTECT(Patient Related OuTcomes with Endeavor versus Cypher Stenting)」の結果から分かった。ステント血栓症の発生率について、DES同士を直接比較した大規模臨床試験は初めて。8月25~29日の日程で、ドイツ・ミュンヘンで開催された欧州心臓病学会(ESC)2012のHOT LINEセッションで、ベルギー、OLV Ziekenhuis Cardiovascular CenterのWilliam Wijns氏が27日報告した。(医学ライター・森永知美)William Wijns氏


ステント血栓症発生抑制において、ZESがSESよりも良好な成績を示すことが知られている。試験は、異なる薬剤溶出ステント(DES)の、長期的な安全性臨床転帰を検討することを目的に実施された。


対象は、18歳以上で、1つ以上の冠動脈病変を有す急性冠症候群(=ACS:無症候性虚血、安定狭心症、非ST上昇型心筋梗塞、ST上昇型心筋梗塞、不安定狭心症を含む)患者8709例で、ZES群(4357例)、SES群(4352例)の2群に無作為に割り付けた。登録基準に病変の複雑性は含まれておらず、実臨床に近いプロトコルとなっているのが特徴だ。


主要評価項目は、ARC(Academic Research Consortium )の定義によるDefinite(ACSとしての臨床像があり、かつ 造影あるいは剖検による血栓症が確認されたもの)とProbable(標的病変の灌流領域の心筋梗塞で、他に責任病変が同定されないもの、あるいは30日以内の説明できない死亡)のステント血栓症の3年後の発生率とした。患者の登録期間は、2007年5月21日~08年12月22日までで、36カ国、196施設から登録がなされた。


抗血小板療法については、アスピリンとチエノピリジン系薬剤(クロピドグレルなど)の抗血小板薬2剤併用を推奨し、投与期間は、ガイドラインなどに基づき、各医師の裁量とされた。


患者背景は、年齢がZES群62.3歳、SES群は62.1歳、糖尿病の合併が26.9%、28.4%だった。安定狭心症が49.5%、48.3%、急性心筋梗塞発症から72時間以内はそれぞれ14.0%、14.7%、複雑な病変を有する患者は58.0%、58.1%だった。事前拡張はZES群67.5%、SES群69.4%で、SES群が有意に多く(p=0.02)、1病変あたりのステント数(1.16、1.13、p=0.001)、ステント留置成功率(それぞれ96.9%、95.5%、p<0.0001)は、ZES群で有意に多かった。


抗血小板薬2剤併用(DAPT)は、入院時に96%(8402例)、留置から1年後に88%(7456例)、2年後に37%(3401例)、3年後に30%(2364例)だった。ステントに分けてみると、留置から1ヵ月後ZES群で96.4%、SES群で96.6%、1年後がそれぞれ87.4%、88.1%、3年後がそれぞれ29.7%、30.3%、どのタイミングでも両群に有意差はみられなかった。



◎1年以降でステント血栓症発症率に有意差 ZES群で有意に低く


主要評価項目の発生率は、ZES群で1.42%、SES群では1.79%で、両群間に有意差はみられなかった(ハザード比0.81、95%CI: 0.58 – 1.14、p=0.224)。事前に予測していた主要評価項目の発生率は、ZES群が1.5%、SES群が2.5%で、ZES群では予測通りだったものの、SES群では低値となった。


副次評価項目についても、全死亡+広範囲非致死性心筋梗塞(ZES群:5.3%、SES群:6.0%、p=0.16)、全死亡+非致死性心筋梗塞(ZES群:7.7%、SES群:8.4%、p=0.25)、心臓死+広範囲非致死性心筋梗塞(ZES群:3.7%、SES群:4.1%、p=0.33)、心臓死+非致死性心筋梗塞(ZES群:6.2%、SES群:6.6%、p=0.45)で、いずれの項目も両群間に有意差はみられなかった。


そのほか、脳卒中の発生率はZES群で1.5%、SES群で1.4%。出血(TIMI基準による大出血、微小出血、最少出血)はZES群で4.7%、SES群で4.4%だった。一方、標的病変再血行再建(=TLR、ZES群:5.6% 、SES群:3.5%)と標的血管再血行再建術の施行率は、(=TVR、ZES群8.2% 、 SES群7.1%)ZES群が有意に高かった(それぞれ、p<0.0001、p=0.03)。ただし、イベント率は両群とも低かった。


探索的解析として、DefiniteとProbableのステント血栓症の1年目の割合と、1年後から3年目までの割合とを見た場合、1年目は両群で有意差はなかったが、1年後から3年目まででは、SES群が1.1%に対してZES群は0.3%で、ZES群が有意に低かった(p<0.001)。


Wijns氏はこれらの結果から、「3年間のDefiniteとProbableのステント血栓症はZESとSESとで発生率に差はなく、その他の臨床的安全性や有効性評価項目も3年間に渡り低く抑制された」と指摘した。しかし、探索的解析で示されたように、「時間の経過とともに両群間のステント血栓症発生率に2群間に差が出てきたことから、継続した追跡が重要だ」と結論付けた。


◎Windecker氏「ステント血栓症はもはや臨床上の課題ではない」


スイス・Bern University HospitalのStephan Windecker氏は、同試験の強みとして、DESを直接比較した最大規模の試験であること、優位性を検討したこと、有効性ではなく安全性を主要評価項目に設定したこと、試験地域がグローバルであったことなどを挙げた。

主要評価項目において有意差を認められなかったが、「探索的研究から初期世代のSESでは、遅発性の動脈治癒反応に関する懸念がみられた」と指摘。同試験から、新世代のDESが用いられている現在では、「ステント血栓症はもはや臨床上の課題ではなく、かつての安全性への懸念は有効性を犠牲にすることなく、解決されている」と結論付けた。

なお、同試験の結果については同日付の「THE LANCET」online版に掲載された。

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