アッヴィ合同会社のティアゴ・カンポス ロドリゲス社長は６月11日、就任後初となる記者会見に臨み、「患者さんと社員に最大のインパクトをもたらすために日本のヘルスケアを変革するリーダーになる」と意気込みを示した。その上で、2029年までの５年間で製薬企業の国内売上トップ10入りを果たすと目標を掲げた。さらに、中長期的な視点で日本のイノベーション推進に向けて、国内のバイオテック企業やスタートアップ、アカデミアなどを対象とした「アッヴィ・ジャパン・イノベーション・アワード」を開催すると発表。「日本発のイノベーションをよりグローバルの患者さんに届けていきたい」と抱負を語った。

24年11月に就任したカンポス ロドリゲス社長は今後５年間のビジョンとゴールとして、国内売上トップ10のほか、売上の倍増や、事業領域における医療従事者や患者の評価でNo.1となるなどの目標を掲げた。売上増に向けた戦略として既存製品の価値最大化を掲げ、特にヒト化抗ヒトIL-23p19モノクローナル抗体製剤・スキリージや経口JAK阻害薬・リンヴォックなど「免疫疾患領域が一番大きなインパクトを持つ」と期待。さらにがん領域や精神・神経領域などでも高い成長率を見込んでいるとして、「今後も革新を続けていくことが非常に重要。それこそが日本でリーディングカンパニーになる秘訣だ」と訴えた。

◎イノベーション・アワード開催へ　「イノベーション牽引する環境を醸成する」

カンポス ロドリゲス社長は日本発のイノベーション創出にも意欲を示し、独自のイノベーション・アワードを開催する考えを明かした。国内のバイオテック企業やアカデミアなどを対象としたもので、受賞者には研究施設の貸与や1000万円の賞金を用意する。「日本に拠点を置く外資系企業として、ポジティブな医療エコシステムへの貢献が必要だ。日本では初の試みであり、イノベーションを牽引する環境を醸成していきたい」と狙いを語った。さらに「研究が成功した場合には、さらなるパートナーシップや投資を深めていく可能性はある」と将来的な連携強化も見据えて取り組む姿勢を示した。このほか、国内へのより多くの臨床試験の誘致や、国内でのエビデンス創出、グローバル人財の育成などにも注力していく考えだ。

◎24年国内業績　前年比11％増の1700億円　適応追加など５つの承認取得

24年の日本国内の売上高は前年比11％増の約1700億円に伸長し、グローバルでは米国を除く世界で２番目の売上規模となった。特に免疫疾患領域ではスキリージとリンヴォックが牽引し、２製品合わせて前年比32.3％の成長を遂げた。血液がん領域では、ジェンマブと共同販促を行っている二重特異性抗体・エプキンリが売上に寄与。経口BCL-2阻害薬・ベネクレクスタと合わせた2製品の成長率は102.0％と大幅に伸長した。

開発面では、24年～25年5月まで間にスキリージの潰瘍性大腸炎の適応追加やリンヴォックの小児用量追加など5つの承認を取得。6月に就任した藤野忠広開発本部長は、ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体・ヒュミラも含め「免疫疾患領域３剤の製品最大化をさらに進め、地位を不動のものにした」と強調した。また、片頭痛発作の発症抑制を効能・効果とする経口CGRP受容体拮抗薬・アトゲパント（一般名）や適応追加など6品目の申請も行った。

◎27年までに25の申請予定　がん領域のFIH試験や小児開発にも注力

27年までの今後３年間に25の申請を予定。藤野本部長は「順調な結果が得られれば、免疫疾患▽がん▽精神・神経疾患▽美容医療▽アイケア―の全ての重点領域で申請が行える見込みだ」との見通しを示した。遺伝子治療による滲出型加齢黄斑変性の治療を目指す「ABBV-RGX-314」（開発コード）は国際共同第３相試験を実施中。単回投与で血管内皮増殖因子（VEGF）の働きを抑える抗VEGF抗体が持続的に産出され「ファースト・イン・クラスになり得る」と期待を込めた。

日本のポートフォリオでは、93の開発品目に対して、140の開発プロジェクトが進行中または計画中で、106の臨床試験が実施中。治験数は年々増加しており、現在は約半数をがん領域が占めるという。日本での開発戦略として、がん領域のFIH試験に積極的に参加しており、藤野本部長は「グローバルでの開発に貢献するとともに、日本人データを早くから収集することで早期承認につなげていきたい」と述べた。また、海外で行われる小児に関する臨床試験には原則参加するなど、小児開発にも力を入れているという。