埼玉医大・棚橋教授 脳梗塞の再発予防 急性期からのクロピドグレル投与が有用 国内試験から
公開日時 2014/01/14 03:52
埼玉医科大学国際医療センター副院長で神経内科教授の棚橋紀夫氏はこのほど、サノフィ主催のメディアセミナーで講演し、心原性を除く急性期脳梗塞の治療において、発症早期からの抗血小板薬クロピドグレル(製品名:プラビックス)の投与が有用との考えを示した。特定使用成績調査APEX試験の結果に基づく見解。
APEX試験は、クロピドグレル投与歴のない非心原性脳梗塞患者1075人(175施設)を対象に行われた。発症後7日以内にクロピドグレル投与を開始した結果、3か月間のイベント発生率は4.36%、脳出血0.19%、全出血性イベント1.43%だった。
棚橋氏は、「試験自体は実薬群のみで他剤との比較ではない」と前置きした上で、「国内の実臨床データやこれまでの試験結果と比べて同等かそれ以上の有効性と安全性が示されている」と評価した。ただ、出血イベントの状況を詳細に見ると、ヘパリンと併用した患者で他の併用に比べて出血リスクが上昇していたことから、「これらの併用では注意が必要と考えている」と指摘した。
◎2015年改訂予定の脳卒中治療ガイドラインに反映も
棚橋氏によると、急性期の抗血栓療法は、日本では諸外国で使用されていない注射剤による治療が普及(アテローム性梗塞にはアルガトロバン、ラクナ梗塞にはオザグレル)してきたため、経口薬は慢性期に開始されることが多かった。しかし、発症直後から数日内の再発リスクが最も高いことが明らかとなり、注射剤と経口薬の併用療法が浸透してきている。急性期には経口薬の服用困難者が存在するが、薬を粉砕して胃管から投与しているという。同氏は、APEX試験によって現在の実臨床の妥当性が裏付けられたとして、「15年に改訂される脳卒中治療ガイドラインにも今回の結果が反映されるだろう」との見方を示した。
また、脳梗塞発症後の経口抗血小板療法として、アスピリン、クロピドグレル、シロスタゾールの選択肢があるが、新たな治療薬としてはプラスグレルがフェーズ3の段階にある。棚橋氏は、「現時点ではクロピドグレルで十分と考えているが、進行中の試験はプラスグレルとクロピドグレルが比較されており、結果によっては考えを変えていかないといけない。注目して結果を待っているところ」との所感も述べた。