新薬5製品承認へ 不眠症薬・ボルズィ、運転に係る注意喚起内容の確認が承認の前提に 薬事審第一部会
公開日時 2025/08/01 04:49
厚生労働省の薬事審議会・医薬品第一部会は7月31日、大正製薬の不眠症に対するオレキシン受容体拮抗薬・ボルズィ錠(一般名:ボルノレキサント水和物)など新薬5製品の承認の可否を審議し、承認することを了承した。ただ、厚労省担当者によると、ボルズィ錠については、委員から自動車運転能力への影響に関して、添付文書の注意喚起の記載内容や情報提供資材の記載方法について複数の指摘があったといい、委員による確認が承認の前提となっている。
審議され、承認が了承された新有効成分含有医薬品には、帝人ファーマの副甲状腺機能低下症治療薬・ヨビパス皮下注(パロペグテリパラチド)や、参天製薬の緑内障、高眼圧症治療薬・セタネオ点眼液(セペタプロスト)が含まれる。
報告品目は2製品。日本イーライリリーの早期アルツハイマー病治療薬・ケサンラについて副作用のアミロイド関連画像異常(ARIA)発現の低減を目指した用法・用量変更の承認が了承された。
【審議品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽ドプテレット錠20mg(アバトロンボパグマレイン酸塩、Swedish Orphan Biovitrum Japan):「持続性及び慢性免疫性血小板減少症」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間は残余(令和13年3月26日まで)。
トロンボポエチン(TPO)受容体作動薬。現在の適応は「待機的な観血的手技を予定している慢性肝疾患患者における血小板減少症の改善」であり、免疫性血小板減少症(ITP)への適応拡大となる。
ITPは、後天性に血小板に対する自己抗体ができることで免疫的な機序によって血小板数が減少し、出血が起こりやすくなる疾患であり、日本においては、年間10万人あたり2.16人が新規に発症すると推計されているという。
持続性及び慢性ITPに対する用法・用量は「通常、成人には、初回投与量20mgを1日1 回、食後に経口投与する。投与開始後、血小板数、症状に応じて用法・用量を適宜調節する。また、最高投与量は40mgを1日1回とする」。
国内で、慢性ITPの適応を持つTPO受容体作動薬には、レボレード錠、ロミプレート皮下注がある。
海外でドプテレットは、2018年以降、待機的な観血的手技を予定している慢性肝疾患患者における血小板減少症及び既存治療で効果不十分な慢性ITPに係る効能・効果で、25年5 月現在、欧米を含む15の国又は地域で承認されている。
▽ボルズィ錠2.5mg、同錠5mg、同錠10mg(ボルノレキサント水和物、大正製薬):「不眠症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
オレキシン受容体(OX1およびOX2受容体)拮抗薬。不眠症に対するオレキシン受容体拮抗薬としては、ベルソムラ錠、デエビゴ錠、クービビック錠に続く4剤目となる。
厚労省の担当者によると、部会審議では、自動車運転能力に対する影響に関して、添付文書の注意喚起の記載内容や、運転技能評価試験の解釈について複数の指摘があったという。これを踏まえ、承認の前提として添付文書の注意喚起の記載内容の修正や情報提供資材での十分な情報提供について委員による確認が必要となった。「審議という形ではなく、修正した添付文書、資材について確認をいただくという形になる」と説明した。
ボルズィの用法・用量は「通常、成人には1日1回5mgを就寝直前に経口投与する。なお、症状により適宜増減するが,1日1回10mgを超えないこととする」。
海外では2025年5月時点で承認されている国又は地域はない。
▽セタネオ点眼液0.002%(セペタプロスト、参天製薬):「緑内障、高眼圧症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
FP受容体作動作用に加え、EP3受容体作動作用を有する新規メカニズムのプロスタグランジン系治療薬。既存のFP受容体作動薬を上回る眼圧下降作用を期待して開発された。
用法・用量は「1回1滴、1日1回点眼する」。2025年4月現在、海外において承認されている国又は地域はない。
▽①マグミット錠100mg、②同錠200mg、③同錠250mg、④同錠330mg、⑤同錠500mg、⑥同細粒83%(酸化マグネシウム、マグミット製薬):「便秘症」を効能・効果とし、小児用量を追加する新用量・剤形追加に係る医薬品。再審査期間は4年。
小児用量を追加するもの。100mg錠は新剤形。小児の用法・用量は「通常、1歳以上の小児には酸化マグネシウムとして、1日20~80mg/kgを食後の2回に分割経口投与する」。
▽ヨビパス皮下注168 µgペン、同皮下注294 µgペン、同皮下注420µgペン(パロペグテリパラチド、帝人ファーマ):「副甲状腺機能低下症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。
副甲状腺ホルモン(PTH)の徐放性プロドラッグ。対象疾患とする副甲状腺機能低下症は、体内のカルシウムとリン酸のバランスを調整するPTHの不足によって引き起こされる内分泌疾患。
用法・用量は「通常、成人には、PTH(1-34)として1回18μgを開始用量とし、1日1 回、皮下注射する。以後、患者の血清カルシウム濃度の十分な管理のもとに、1日1回6~60μgの範囲で適宜用量を調整して皮下投与するが、増量又は減量は3μgずつ行うこと」。
1日1回皮下投与で、24 時間にわたり血中PTH濃度を生理学的範囲に維持できる国内初の薬剤となり、根本的な治療薬として期待されている。
デンマークのアセンディス・ファーマ社からの導入品。海外において、2023年11月に欧州で承認されて以降、25年5月現在、米国及び英国を含む31カ国で承認されている。
【報告品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。
▽コセルゴカプセル10mg、同カプセル25mg(セルメチニブ硫酸塩、アレクシオンファーマ):「神経線維腫症1型における叢状神経線維腫」を効能・効果とする新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は残余(令和14年9月25日まで)。
MEK1/2阻害薬。現在、小児に対して承認されており、今回、成人の用量を追加するもので、小児と同一となる。
▽ケサンラ点滴静注液350mg(ドナネマブ(遺伝子組換え)、日本イーライリリー):「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制」を効能・効果とする新用量医薬品。再審査期間は残余(令和14年9月23日まで)。
抗N3pGアミロイドβ抗体。用法・用量について漸増方法を変更するもの。現在の用法・用量は「通常、成人には1回700mgを4週間隔で3回、その後は1回1400mgを4週間隔で、少なくとも30分かけて点滴静注する」となっているが、これを「初回は350mg、2回目は700mg、3回目は1050mg、その後は1回1400mgを4週間隔で、少なくとも30分かけて点滴静注する」に変更する。
厚労省担当者は「アミロイド関連画像異常(ARIA)の発現リスクがあることが知られているが、発現リスクを低減するための用量漸増という臨床試験が行われ、申請されたもの」と説明した。