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SABCS 2022 タンパク質分解薬ARV-471の単剤療法 ER陽性HER2陰性の進行性乳がんで臨床的有効性示す 

公開日時 2022/12/21 04:50
CDK4/6阻害薬はじめ複数の治療歴を有するエストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性の進行性乳がん患者において、経口タンパク質分解薬ARV-471の単剤療法による臨床的有効率(CBR)が38%であったことが第2相コホート拡大試験「VERITAC試験」の結果から明らかになった。ESR1遺伝子変異を有する患者のCBRは51%であった。「サンアントニオ乳がんシンポジウム2022」(SABCS 2022)のGeneral Sessionで、米ミシガン大学のAnne Schott氏が発表した。(メディカルライター/ヘルスケアビジネスコンサルタント 森永知美)

◎第1相試験で30~700 mgの全用量が忍容可能

ARV-471はERを標的とするタンパク質分解誘導キメラ(PROTAC®)タンパク質分解薬で、E3ユビキチンリガーゼとERに直接結合し、ERのユビキチン化とプロテアソーム分解を引き起こす。第1/2相試験は、第1相用量漸増試験(Part A)、第2相コホート拡大試験(Part B、VERITAC試験)、およびパルボシクリブとの併用を検討する第1b相試験(Part C)の3部から構成される。第I相用量漸増試験では30~700 mg全ての用量が忍容可能で、評価可能だった47例におけるCBRが40%、3例が部分奏効(PR)を確定したことが、昨年のSABCSで報告された。

◎第2相コホート拡大試験「VERITAC試験」では200 mgと500 mgを検討

今回のVERITAC試験では71例が対象だった。主な適格基準は、①組織学的または細胞学的にER陽性HER2陰性の進行性乳がんを確認、②RECIST v1.1により測定可能または測定不可能な病変、③内分泌療法が1レジメン以上(局所進行または転移性疾患において6カ月以上の治療を1レジメン以上)、④CDK4/6阻害薬の治療歴が1回以上、⑤局所進行または転移性疾患における化学療法歴が1レジメン以上、であった。ARV-471を200 mg(1日1回経口投与)与える被験者群に35例、500 mg(1日1回経口投与)を与える被験者群に36例割り付けた。主要評価項目はCBR(効果を確定した完全奏効[CR]またはPR、または24週間以上継続した安定[SD]を示した割合)とし、副次評価項目は奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存(OS)、安全性、薬物動態などであった。本解析のデータカットオフは2022年6月6日であった。

被験者の年齢中央値は60歳、66.2%がECOGパフォーマンスステータス0で、54.9%が内臓転移を有していた。転移部位は骨69.0%、肝臓45.1%、肺23.9%で、57.7%にESR1遺伝子の変異があった。治療歴全体の中央値は4レジメン、転移疾患に対する治療歴の中央値は3レジメンだった。前治療の種類はCDK4/6阻害薬100%、アロマターゼ阻害薬90.1%、フルベストラント78.9%、化学療法73.2%だった。

◎主なTRAEは倦怠感、悪心、関節痛など。殆どがグレード1か2

治験薬投与下で発現した有害事象(TEAE)は、全グレード(G)で87%、G3/4が21%、G5が1%(疾患進行による急性呼吸不全1例、ARV-471治療とは無関係)に発現した。TEAEにより減量に至ったのは500 mg群の3例(ALT上昇1例、好中球減少1例、倦怠感1例)で、400 mgに減量した。投与中止に至ったのは200 mg群の1例(QT延長)と500 mg群の2例(心電図T波異常1例、腰痛・脊髄圧迫1例)であった。

治療関連有害事象(TRAE)は、G1が34%、G2が31%、G3/4が7%であった。主なTRAEは倦怠感(G1 21%、G2 11%、G3/4 1%)、悪心(G1 11%、G2 6%、G3/4 0%)、関節痛(G1 13%、G2 0%、G3/4 0%)、ほてり(G1 10%、G2 0%、G3/4 0%)、AST上昇(G1 7%、G2 3%、G3/4 0%)で、大多数がG1かG2であった。

◎CBRは被験者全体で38%、ESR1遺伝子変異集団で51%、2例が部分奏効

CBRは200 mg群が37.1%、500 mg群が38.9%、被験者全体で38.0%だった。ESR1遺伝子変異を有する集団では、200 mg群(19例)が47.4%、500 mg群(22例)が54.5%、2群合わせて51.2%であった。

奏効は、200 mg群と500 mg群の1例ずつ計2例がPRであった。さらに5例において標的病変が30%以上縮小していたが、効果の確定がなされていないため、最良効果はPRではなくSDとして報告された。

PFS中央値は、被験者全体で3.7カ月、200 mg群で3.5カ月であった。ESR1遺伝子変異を有する症例では、全体で5.7カ月、200 mg群は5.5カ月だった。

また、第1相試験と第2相VERITAC試験の200 mg群におけるARV-471投与後のER分解率は、中央値が69%、平均値が71%であった。これらの結果から、第3相VERITAC-2試験で採用されるARV-471の用量は200 mgとなった。本試験では560例を登録予定で、ARV-471 200 mgとフルベストラント500 mgを比較検討していく。主要評価項目は盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS(ITT集団およびESR1遺伝子変異を有する集団)、副次評価項目はOS、ORR、DOR、CBRなどである。
 
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