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DSTサミット 河野担当相「エビデンスベースに物事を切り替える」 産業を守り医療費下げる 津川准教授

公開日時 2023/08/01 04:52
一般社団法人Data for Social Transformation(DST)は7月31日、東京都内で河野太郎デジタル担当相を交えて「エビデンスが導く日本の未来像~産官学のリーダーが語る」を開催した。河野担当相は、日本の政策決定や予算配分について、「エピソードベース、エモーションベースからエビデンスベースに物事を切り替えていく」と指摘。「しっかりデータを集めることができれば、データに基づいた医療ができる」と述べ、「まずはデータを取る」と強調した。これに医師でカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)医学部准教授の津川友介氏は、「価値に見合った予算配分」を提唱。イノベーティブなものを評価するなどメリハリの効いた予算再配分の実現により、「日本は(製薬)産業を守りながら医療費を下げることができる」と言い切った。

Data for Social Transformation(DST)は、医療、介護、福祉、貧困、雇用および教育の各分野で、データを活用した科学的な効果検証を行うことでエビデンスを導き出し、社会保障分野におけるイノベーションの創出と、ウェルビーイングの実現に寄与することを目的に2022年11月1日に設立した。発起人には、元武田薬品代表取締役の岩﨑真人氏や慶應義塾大学の宮田裕章教授、東京大学の小島武仁教授、東京大学の山口慎太郎教授、Zホールディングスの川邊健太郎Co-CEOら計22人が名を連ねる。なお共同代表理事は、高島宏平氏、近藤正晃ジェームス氏、宮田裕章氏の3氏。

この日のイベントは、「DSTサミットVol.1」として開催され、河野デジタル担当相、経済同友会の新浪剛史代表幹事(オンライン参加)、福岡市長の高島宗一郎氏、UCLA准教授の津川友介氏が基調セッションに登壇した。

河野デジタル担当相は、「マイナンバーカードを保険証に使っていただいて、それでしっかりとデータを集めることができればデータに基づいた医療ができる」と述べ、「効果の薄い治療は、どんどん保険から外していくということができるようになっていくだろう」と見通した。また、過去の政策決定プロセスに絡めながら、「俺が子供の頃はこうだったというエピソードベースやエモーションベースだった」と振り返りながら、これからは様々なデータを集積・分析を通じて、「エビデンスベースに物事を切り替えていく必要がある」と強調した。

◎津川准教授 医療は必ずしもコストだけじゃない 関連産業に対する投資の意味合いもある

津川准教授は、2年に1回の診療報酬改定を引き合いに出しながら、「医療費を下げようという画一的な引き下げが政治的な駆け引きの中で行われてきた」と指摘。「必ずしも健康改善の価値の大きさとか、どれだけ介護費が減らせるかという価値の大きさが評価されてきたわけではない」と批判。「日本の医療は比較的みんなが貧しくなっていくみたいに感じる」との印象を語った。さらに同氏は、「医療は必ずしもコストだけじゃなく、関連産業に対する投資の意味合いもある。どうやったら価値の高いイノベーティブで革新的なものに予算を配分するか。メリハリの効いた予算の再分配には、エビデンスが必要だ」と応じた。

◎高島・福岡市長 サービスを受ける側のメリットに関する通訳・翻訳が大事になる

高島市長は、「社会保障費を下げようっていうのは、マネジメントする側にとってめちゃくちゃ大事なわけだが、一市民の立場から見ると、社会保障がサステナブルになると言われても、誰も“自分事”として受け止めてない」と指摘。「サービスの受ける側である市民、国民が自分たちにとってどんなメリットがあるかっていうことを通訳、翻訳してあげることが多分この分野は大事になってくるのではないか」との見解を表明した。

◎新浪・経済同友会代表幹事 効果の無いものへの予算配分をやめる EBPMが重要

新浪代表幹事は、政府が行う歳出改革とワイズスペンディング(賢い予算配分)を絡めながら、「両方とも同じ意味なのかって言うと、実はそういう議論はされていない」と指摘。「ワイズスペンディングとは、本当に効果のある政策はリターンが高いからもっと(予算を)使いましょうということ。効果の無いものは、結果として(予算配分を)やめていきましょうという考え方で、その効果を図る上でEBPM(エビデンスに基づく政策立案)が重要になる」と強調した。

新浪代表幹事はまた、「ワイズスペンディングを実現するための土台としてマイナンバーが必要。しっかりとした土台として作り上げるべきである」と河野担当相に促した。

これに河野担当相は、「これからは何で政策評価するのか。政策をやってみてそのデータを比較して、本当に想定通りになっていたのか。その要因分析がきちんとできるようにならないといけない。まずデータを取るっていうのはすごく大事だと、改めて認識します」と応えた。

◎元武田薬品・岩﨑氏「一緒に新しいデータを作って、社会を変えていきたい」

発起人の1人である元武田薬品代表取締役の岩﨑真人氏は「DSTサミットVol.1」で閉会の挨拶を行い、「医療、介護、教育、労働という観点で見ると一つ一つが別々のセグメントのように見えるが、よく見てみれば、介護の事前領域は医療だし、医療の事前領域は教育であり労働であり食である。どこかをいじると必ず全部に影響が出る」と指摘。ただ、今までは社会全体のデータを取ったことがないため、「医療なら医療の効果をどう見るか、教育なら教育の効果をどう見るかにすぎなかった」と述べながら、「このDSTの取り組みは、全ての領域を後から振り返っても全部見られるような仕組みになってくる」と強調。「皆さん方と一緒に新しいデータを作って、社会を変えていきたいなというふうに思います」と締めくくった。
 
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