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名大病院 患者死亡事案で報告書公表 診断レポートの“コピペ”で担当医が「肺がんの疑い」を見落とし

公開日時 2021/02/22 04:50
名古屋大学医学部附属病院は2月19日、2011年11月に行った胸部CT検査の画像診断レポートを主治医が確認したものの適切な対応をせず、患者(当時60歳代男性)の肺がんが進行し、20年3月に死亡した事例に関する調査報告書を公開した。「肺がんの疑い」と記載した画像診断レポートを担当医が確認せず、5年9か月にわたり根治的治療の機会を逸した。背景には担当医がレポートを電子カルテに記載する際、コピー&ペーストで「肺がんの疑い」を見逃したことがある。同院は、外来事前準備と当日の診療の齟齬の解消や、コピー&ペースト機能の制限など再発防止策を提言した。

患者は 2011 年5月に前頭部の頭痛と微熱で名大病院総合診療科を受診。6 月に撮影した PET/CT 検査において、右肺尖部に結節影を認め、同年11月に行った胸部CT検査で「肺がんの疑い」が認識されていた。この時、胸部 CT 検査画像の読影を行った放射線科医は、「右肺上葉に肺癌の疑い:5ヶ月前と著変なし」と画像診断レポートに記載している。

一方、これを受けた担当医は、患者の外来診察の準備(予習)に際し、電子カルテに「【頬部CT(原文ママ)】右肺上葉に肺癌の疑い:5ヶ月前と著変なし。肺陰影は変化無し:6ヶ月後フォロー」と記載した。なお、下線部はコピー&ペースト機能を用いて記載したという。

担当医はまた、CT 検査画像や画像診断レポートを確認しなかったほか、外来準備(予習)の記録を確認せず、過去の再診記録「#1側頭動脈炎 (疑い)、#2右肺尖部の不整形な結節」をコピー&ペースト機能を用いてカルテに貼付し、その情報をもとに診察を行った。結果的に担当医は「肺がんの疑い」を見逃し、6か月後のフォローを判断する。患者は、その後3年6か月にわたり外来で側頭動脈炎の治療が行われ、2015年5月22 日に終診。2017年8月に循環器疾患で名大病院を受診した際に、肺がんと診断された。同院は肺がんの治療を同年9月より行ったが根治に至らず、患者は2020年3月に死亡した。解剖の結果、死因は肺癌多発転移による腫瘍死だった。

◎コピー&ペースト機能制限や画像診断レポートの患者への説明など再発防止策を提言 

名大病院事例調査委員会は再発防止策を提言した。事例調査委員会の総括では、「画像診断レポートの内容とその重要性について、少なくとも、患者と十分共有しなかったことは不適切」と指摘した。また、担当医がカルテ記載時にコピー&ペースト機能を用いたことにも触れ、「名大病院がコピー&ペースト機能使用時のリスクを強く注意喚起していなかったこと、名大病院における画像診断レポートの患者との共有方法、名大病院が重要画像診断レポートに何らかの目印をつけていなかったことは、当時の水準に照らし、標準から逸脱したものではないが、現在では改善の余地がある」と強調した。名大病院は2018年からコピー&ペースト機能使用時のリスクについて周知を開始している。

名大病院は、一連の診療行為が不適切だったことを認め、2月12日に患者遺族に謝罪した。




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