ノバルティスの前立腺がんRLT静注製剤・プルヴィクトなど新薬10製品を審議へ 8月22日の第二部会で
公開日時 2025/08/12 04:50
厚生労働省は8月22日に薬事審議会・医薬品第二部会を開き、ノバルティスファーマのPSMA陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺がんに対する放射性リガンド療法(RLT)の静脈内注射剤・プルヴィクト静注(一般名:ルテチウムビピボチドテトラキセタン(177Lu))など新薬10製品の承認の可否を審議する。
このほかの審議予定品目には、日本ベーリンガーインゲルハイムのHER2遺伝子変異陽性の非小細胞肺がんに対する経口HER2阻害剤・ヘルネクシオス錠(ゾンゲルチニブ)が含まれる。また、ヤンセンファーマのライブリバント点滴静注の皮下投与を可能としたリブロファズ配合皮下注(アミバンタマブ、ボルヒアルロニダーゼ アルファ)も審議する。
◎ランマーク、アクテムラ、シンポニーの各BS、承認方針を報告へ
報告予定品目は11製品。厚労省からランマーク、アクテムラ、シンポニーのそれぞれ初のバイオ後続品(BS)を承認する方針が報告される予定。
【審議予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽ゾフルーザ顆粒2%分包(バロキサビル マルボキシル、塩野義製薬):「A型又はB型インフルエンザウイルス感染症の治療及びその予防」を対象疾患とする新用量医薬品。
キャップエンドヌクレアーゼ阻害剤。顆粒剤について、体重20kg未満の小児の用量を追加するもの。
▽ネフィー点鼻液1mg、同点鼻液2mg(アドレナリン、アルフレッサ ファーマ):「蜂毒、食物及び薬物等に起因するアナフィラキシー反応に対する補助治療(アナフィラキシーの既往のある人またはアナフィラキシーを発現する危険性の高い人に限る)」を対象疾患とする新投与経路医薬品。
アドレナリン点鼻薬。重篤な全身性のアレルギー反応であるアナフィラキシーに対して広く使われているアドレナリン注射剤(エピペン)は、患者自身あるいは介護者による筋肉内への注射が必要となる。ネフィーが承認されると、鼻へのスプレーによる簡便で迅速な投与が可能となり、患者や介護者等の負担軽減が期待できる。
▽リブロファズ配合皮下注(①アミバンタマブ(遺伝子組換え)、②ボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)、ヤンセンファーマ):「EGFR遺伝子エクソン20挿入変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん、EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」を対象疾患とする新医療用配合剤。
抗EGFR/MET二重特異性抗体・アミバンタマブ(ライブリバント点滴静注)とrHuPH20 製剤を組み合わせることで、皮下投与を可能としたもの。効能・効果は、ライブリバントと同じ。
▽テセントリク点滴静注840mg、同点滴静注1200mg(アテゾリズマブ(遺伝子組換え)、中外製薬):「再発又は難治性の節外性NK/T細胞リンパ腫・鼻型」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。
抗PD-L1抗体。対象疾患とする節外性NK/T細胞リンパ腫・鼻型(ENKL)は、鼻腔に多く発症する悪性リンパ腫の一つ。日本では、悪性リンパ腫(年間発症数約3万6000人)の中で、約0.68%を占めるという。進行期では初回治療後約6割の患者が再発し、標準治療は確立されていない。
▽ボラニゴ錠10mg、同錠40mg(ボラシデニブ クエン酸水和物、日本セルヴィエ):「IDH1又はIDH2遺伝子変異陽性の神経膠腫」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。
変異型イソクエン酸脱水素酵素(IDH)1及び2を阻害する分子標的薬。対象疾患とする神経膠腫(グリオーマ)は、悪性の脳腫瘍の一つ。承認申請は、国際共同第3相INDIGO試験などの結果に基づき行われた。
▽ヘルネクシオス錠60mg(ゾンゲルチニブ、日本ベーリンガーインゲルハイム):「がん化学療法後に増悪したHER2(ERBB2)遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。
経口HER2特異的チロシンキナーゼ阻害剤。肺がんの約4%はHER2遺伝子異常によって引き起こされるという。承認申請は、HER2遺伝子変異陽性の切除不能または転移性の固形腫瘍を対象に単剤療法を評価した第1相非盲検用量漸増試験(Beamion LUNG-1試験)の最新データ等に基づく。
国内では、エンハーツ点滴静注用が「がん化学療法後に増悪したHER2(ERBB2)遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」の適応を持っている。
▽イブトロジーカプセル200mg(タレトレクチニブアジピン酸塩、日本化薬):「ROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。
経口ROS1阻害剤。米ニュベーション社からの導入品。承認申請はグローバル第2相TRUST-II試験の結果などに基づく。
国内では、ROS1融合遺伝子陽性NSCLCに対して、ザーコリカプセル、ロズリートレクカプセル、オータイロカプセルが承認されている。
▽プルヴィクト静注(ルテチウムビピボチドテトラキセタン(177Lu)、ノバルティスファーマ):「PSMA陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺がん」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。
▽ロカメッツキット(―、ノバルティスファーマ):「PSMA標的療法の前立腺がん患者への適応判定の補助」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。
▽ガリアファーム68Ge/68Gaジェネレータ(ガリウム(68Ga)ジェネレータ、Eckert Ziegler Radiopharma GmbH):「陽電子放出断層撮影(PET)イメージングのために承認された被標識用製剤のガリウム(68Ga)標識」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。
プルヴィクトは、標的化合物(リガンド)と治療用放射性核種(ルテチウム-177)を組み合わせた放射性リガンド療法(RLT)の静脈内注射剤。膜貫通型タンパク質である前立腺特異的膜抗原(PSMA)を発現する前立腺がん細胞などの標的細胞に結合し、放射性同位元素からのエネルギー放出により標的細胞や近傍の細胞を損傷し、細胞の複製能力を阻害および/または細胞死を誘発する。
PSMAのPETイメージングのためのロカメッツキットおよびガリアファームをセットで用いる。
【報告予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。
▽リブタヨ点滴静注350mg(セミプリマブ(遺伝子組換え)、リジェネロン・ジャパン):「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」を対象疾患とする新効能医薬品。
抗PD-1抗体。承認されると、子宮頸がんに続く2つ目の適応となる。
▽デノスマブBS皮下注120mgRM「F」(デノスマブ(遺伝子組換え)[デノスマブ後続1]、富士製薬工業):「多発性骨髄腫による骨病変及び固形がん骨転移による骨病変」を対象疾患とするバイオ後続品。
抗RANKL抗体。承認されるとランマークで初のバイオ後続品(BS)となる。
▽イミフィンジ点滴静注120mg、同点滴静注500mg(デュルバルマブ(遺伝子組換え)、アストラゼネカ):「非小細胞肺がんにおける術前・術後補助療法、膀胱がんにおける術前・術後補助療法」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。
抗PD-L1抗体。非小細胞肺がんの周術期治療において、がん免疫療法薬では、テセントリクが「PD-L1陽性の非小細胞肺がんにおける術後補助療法」、オプジーボが「非小細胞肺がんにおける術前補助療法」、キイトルーダが「非小細胞肺がんにおける術前・術後補助療法」の適応を持っている。
一方、膀胱がんの周術期治療において、がん免疫療法薬では、オプジーボが「尿路上皮がんにおける術後補助療法」の適応を持っている。
▽①トシリズマブBS点滴静注80mg「CT」、②同点滴静注200mg「CT」、③同点滴静注400mg「CT」、④同皮下注162mgシリンジ「CT」、⑤同皮下注162mgオートインジェクター「CT」(トシリズマブ(遺伝子組換え)[トシリズマブ後続1]、セルトリオン・ヘルスケア・ジャパン):「①②③、▽既存治療で効果不十分な下記疾患、関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎、全身型若年性特発性関節炎―。▽キャッスルマン病に伴う諸症状及び検査所見(C反応性タンパク高値、フィブリノーゲン高値、赤血球沈降速度亢進、ヘモグロビン低値、アルブミン低値、全身倦怠感)の改善。ただし、リンパ節の摘除が適応とならない患者に限る。▽悪性腫瘍治療に伴うサイトカイン放出症候群、④⑤既存治療で効果不十分な下記疾患、関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)」
抗IL-6レセプター抗体。承認されるとアクテムラで初のバイオ後続品(BS)となる。
▽ジビイ静注用500、同静注用1000、同静注用2000、同静注用3000(ダモクトコグ アルファ ペゴル(遺伝子組換え)、バイエル薬品):「血液凝固第VIII因子欠乏患者における出血傾向の抑制」を対象疾患とする新用量医薬品。
ペグ化遺伝子組換え型血液凝固第Ⅷ因子製剤。現在、12歳以上の用量が設定されており、今回、7歳以上12歳未満の用量を追加するもの。
▽テセントリク点滴静注840mg、同点滴静注1200mg(アテゾリズマブ(遺伝子組換え)、中外製薬):「▽切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん、▽PD-L1陽性の非小細胞肺がんにおける術後補助療法、▽進展型小細胞肺がん、▽PD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳がん」を対象疾患とする新用量医薬品。
抗PD-L1抗体。3週間隔投与に関して4週間隔投与を追加するもの。
▽ルマケラス錠120mg(ソトラシブ、アムジェン):「がん化学療法後に増悪したKRASG12C変異陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。
▽ベクティビックス点滴静注100mg、同点滴静注400mg(パニツムマブ(遺伝子組換え)、武田薬品工業):「がん化学療法後に増悪したKRASG12C変異陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん」を対象疾患とする新効能医薬品。
KRASG12C阻害剤および抗EGFR抗体。結腸・直腸がん(CRC)患者の約3%がKRASG12C変異を有すると推定されている。承認申請は、ルマケラスの2用量(240mgまたは960mg)とベクティビックスを併用投与した国際共同第3相CodeBreaK300試験の結果に基づき行われた。
▽ジャイパーカ錠50mg、同錠100mg(ピルトブルチニブ、日本イーライリリー):「他のBTK阻害剤に抵抗性又は不耐容の再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)」を対象疾患とする新効能医薬品。
可逆的非共有結合型BTK阻害剤。承認されると、現在の「他のBTK阻害剤に抵抗性又は不耐容の再発又は難治性のマントル細胞リンパ腫」に続く2つ目の適応となる。
▽ライアットMIBG-I 131静注(3-ヨードベンジルグアニジン(131I)、PDRファーマ):「MIBG集積陽性の神経芽腫」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。事前評価済公知申請。
放射性治療薬。事前評価済公知申請であり、既に保険適用となっている。
▽ゴリムマブBS皮下注50mgシリンジ「F」(ゴリムマブ(遺伝子組換え)[ゴリムマブ後続1]、富士製薬工業):「既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)」を対象疾患とするバイオ後続品。
抗TNFα抗体。承認されるとシンポニーで初のバイオ後続品(BS)となる。