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日医・松本会長 26年度診療報酬改定「いわゆる“真水”での対応が必要」 消費税の増収分活用を訴え

公開日時 2025/05/19 04:52
日本医師会の松本吉郎会長は5月16日の定例会見で、骨太方針2025を念頭に、26年度診療報酬改定に向けて「あくまで財源を純粋に上乗せする“真水”での対応が必要だ」と主張した。松本会長は、「現在の医療機関の経営はかつてなく厳しい状況となっており、経営努力の限界はとうに超えている」と強調。「医療費のどこかを削って財源をねん出するという方向では、医療機関経営の改善にはつながらず、賃金・物価上昇への対応等ができない」と指摘した。“真水”の財源については消費増税分が社会保障に活用されていない現状を指摘し、「経済成長の果実である消費税の増収分をしっかりと社会保障に活用すべき」と訴えた。

◎ある日突然病院がなくなる「恐れていた事態はすでに起きている」 危機感を露わに

政府与党内で骨太方針2025をめぐる議論が加速するなかで、日本医師会は国会や政府与党への働きかけを強めている。医療機関経営が厳しさを増すなかで、26年度診療報酬改定に向けて、「賃金・物価の上昇に応じた公定価格への適切な反映」を求めている。

松本会長は、「医療・介護業界でも他産業並みの賃上げができるよう、賃金・物価の上昇を踏まえた仕組みを導入していく必要がある。現在の医療機関の経営状況では、これ以上の賃上げは到底不可能であり、このままでは人手不足に拍車がかかり患者さんに適切な医療を提供できなくなってしまう」と訴える。

実際、400床を有する地域医療支援病院である、兵庫県伊丹市の近畿中央病院が経営の厳しさから年度内での診療休止を検討していることを引き合いに、「ある日突然病院がなくなってしまうと危機感を訴えてきたが、恐れていた事態は起きようとしているのではなく、すでに起きている」と危機感を露わにした。

◎医療費を削って財源をねん出する方法は「医療機関経営状況から見て取るべきでない」

そのうえで、「24年度診療報酬改定時の大臣折衝における生活習慣病を中心とした効率化、適正化のような医療費のどこかを削って財源をねん出するという方向では医療機関経営の改善にはつながらず賃金・物価の上昇への対応等ができない」と指摘。「医療機関は言わば限界まで乾いた布のような状況にあり、いくら絞ったところでもう水は出ない。あくまでも財源を純粋に上乗せするいわゆる真水での対応が必要だ」と強調した。松本会長は、「(医療の)無駄があるところについてしっかり対応していくことは当然だ。しかし、どこかを削ったうえで、上に載せるという手法は現在の医療機関の経営状況から見て取るべきではない。
高齢化の伸び、賃金の上昇、物価の高騰、イノベーションや医療技術の高度化への対応、この4点をしっかりと上に受けるべきだというのが私たちの主張だ」と述べた。

◎「まずは消費税増収分を社会保障に」 増税後の増収分使用せず広大への負担付け回し軽減に活用

財源については、「近年、経済成長に伴って、消費税、所得税、法人税等は大きく増加している。それらの増収分について社会保障の安定財源として活用できるようするための新たな仕組みを構築することを求めている」と表明。特に、消費税について「まず社会保障、特に医療費の方にしっかり回していただきたい」と訴える。

政府が社会保障・税一体改革で消費増税分を社会保障の安定財源とすることを明確にしている。一方で、消費税収は20年度の21兆円から24年度に23.8兆円、25年度予算では24.9兆円と増加。20年度と比べると3.9兆円も増加している。消費税収は、増税前は1%あたり2.66兆円だったが、現在では3.2~3.3兆円と1%あたり約6000億円増加していると説明。22年度の消費税増収額は計14.3兆円から25年度には計16.3兆円へと増加したが、「増収分は後代への負担の付け回し軽減として社会保障の充実に使われておらず、国民は消費税による社会保障の恩恵を実感できていない。このことが国民の税への不信を招いているとも言えるのではないか」と指摘。「消費税収は社会保障に充てるとされており、経済成長の果実である消費税の増収分をしっかりと社会保障に活用すべき」と主張した。

◎骨太方針2025 高齢化の伸びの範囲内に抑制という「目安対応を抜本的に改めた文言に」

骨太方針2025に盛り込む文言にも言及。骨太方針2024には「経済・物価動向等に配慮しながら」という文言が本文に盛り込まれたが、「全く不十分であることから、さらにそれを強め、高齢化の伸びの範囲内に抑制するという目安対応を抜本的に改めた文言としなければならない。財政フレームを見直し、別次元の対応とする事が必要だ」と指摘した。

自民党の新しい資本主義実行本部が取りまとめた提言では、医療・介護・保育・福祉などの処遇改善に向けた公定価格の引上げが盛り込まれた。提言は、新しい資本主義実行計画と骨太方針2025などに一体的に反映されるとして、「日本医師会は、より明確な表現で確実な賃上げ・物価上昇への対応として反映されるよう引き続き働きかける」と述べた。

◎財政審の議論「大半は容認できない」 生活習慣病管理料「財政審が言及すべき内容ではない」

4月23日に開かれた財務省の財政制度等審議会財政制度分科会についても、言及した。人材紹介会社の手数料などを問題視し、さらなる規制強化を検討することを提案したことを引き合いに、「財政審と同様の考え方も一部にはある」としたうえで、「それ以外の大半は容認できない」と断じた。

財務省が現役世代の負担軽減を主張するなかで、「現役世代の収入が増えており、それに伴って現在の保険料率のままでも保険料収入は増え、社会保障はその中で十分行う事ができている。つまり現行の保険料水準でも共助の財源は増加している」と述べた。協会けんぽの保険料率は18年に財務省などが発表した見通しでは保険料率が10.8%に上昇するとされていたが、実際には12年から13年間10%で、「過大予測だ」と指摘した。

このほか、財務省が生活習慣病管理料のあり方について、一定の条件の下で生活習慣病管理料の算定1か月に1回より長くすることを提案したことに言及。「医師は患者の状況を見ながら対応を行っており、医師がしっかりと判断すべきもの。そもそも中医協で議論されるべき内容であり、財政審が言及すべき内容ではない」と述べた。

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