日医・松本会長 26年度診療報酬改定で物価・賃金上昇対応明確化で「新たな仕組み」2案 真水で対応を
公開日時 2025/10/02 05:00

日本医師会の松本吉郎会長は10月1日の定例会見で、物価・賃金上昇が続くなかで、2026年度診療報酬改定では「賃金物価が大きく上昇した場合については、それに応じて適切に対応する新たな仕組みの導入の検討を明確化しておく必要がある」と主張した。インフレ下では改定2年目に推定から乖離が生じる可能性が高いと指摘し、「新たな仕組み」2案による“対応の明確化”を訴えた。次期改定までの2年間を踏まえた改定水準とする案に加え、奇数年に当たる改定2年目にも改定を行い、基本診療料を中心に機動的に上乗せする案を示した。松本会長は、「26年度補正予算、診療報酬改定のいずれも真水によって対応が行わなければならない」と財源確保の重要性も強調した。
◎現行制度 改定から2年目は推計値で対応「賃金物価高騰下では全く不十分な対応に」
松本会長は診療所、病院ともに医療機関経営が悪化しているとして、医療機関の窮状を改めて訴えた。そのうえで、「このような事態を招いているのは24年度改定において、特に25年度分の対応が不十分だったためと考えられる」との考えを表明。診療報酬改定は2年に1回だが、「医療経済実態調査などのデータをもとに議論できる一年目とは違い、2年目は推計値で対応しなければならないため、賃金物価が急激に高騰しているなかでは、結果として全くもって不十分な対応となってしまう」との考えを示した。
今後も物価・賃金の上昇が続くことが予想されるなかで、「次期改定では改定2年目についても大胆な対応を求める。まずは次の改定までの2年間をしっかりと想定し、対応できる改定を行うことが大切だ」との考えを示した。診療報酬改定は医療経済実態調査に基づいて行われるが、「改定年である26年からは2年、改定2年目の27年からは3年のタイムラグを生じてしまう」、「特に2年目では、昨今のインフレ状況で大きな乖離が生ずる可能性が高い」と危機感を表明。「昨今の急激なインフレ下では議論の進め方や対応を柔軟に変えていく必要が出てきているのではないか」と述べ、“新たな仕組み”を導入する必要性を強調した。
◎改定から2年目(奇数年)に物価・賃金上昇分を「基本診療料を中心に機動的に上乗せ」案も
一つ目の案では、診療報酬改定2年目の物価・賃金の推計値を含めた半分を各年に上乗せし、“次の改定までの2年間をしっかりと見た改定水準”にするというもの。診療報酬改定は2年に1度を維持する。
2つ目の案では、改定から2年目(奇数年)に物価・賃金それぞれ基本診療料を中心に機動的に上乗せする新たな仕組みを導入し、明確化することを提案した。薬価改定と同様、毎年診療報酬を行う形になる。ただ、個別の診療報酬改定項目の改定までは想定していないという。松本会長は、「2年目の分を2年目に確実に上乗せをするということ」と強調した。
26年度診療報酬改定については、賃金について骨太方針2025に春季労使交渉の平均賃上げ率5.26%と明記されているほか、25年度最低賃金が5.97%、人事院勧告は3.62%で、「総合的にどう考えていくか」と指摘。物価については、消費者物価指数(CPI)を中心に考える必要性も指摘した。
◎「いわゆる真水による思い切った緊急的な対策が必要」
財源についても、「26年度補正予算、診療報酬改定のいずれも真水によって対応が行わなければならない」と改めて言及した。適正化の名の下で「医療費が削られ続けてきた」、「10年間の改定率は積み上げると約2%しか上昇していない」と説明。「医療機関の経営は余裕などなくギリギリで適正化等の名目により医療費のどこかを削って財源を捻出するという方法でこれ以上医療費が削減されれば経営が成り立たない。このままでは医療は崩壊する」と訴えた。
消費税収が増税前に1%あたり2.66兆円だったが、現在では3.3兆円程度と7000億円弱増加していることや、協会けんぽなど健康保険組合の保険料収入が上振れしていることなどを示しながら、「税収は物価が上がれば増える。保険料は人件費が上がれば料率はそのままでも全体の収入は増える。経済成長の果実を活用し、あくまで財源を純粋に上乗せする、いわゆる真水による思い切った緊急的な対策が必要だ」と語った。