経団連 「ヘルスケア・データスペース構築」で国民への価値還元を実現 一次利用・二次利用の分断解消
公開日時 2026/05/21 04:51
日本経済団体連合会(経団連)は5月19日、政策提言「Society 5.0時代のヘルスケアV-国民への価値還元を実現するヘルスケア・データスペースの構築」を公表した。創薬や医療機器開発、公衆衛生政策など、現状のヘルスケアデータが新たな価値創出に十分つながっていないと指摘。診療等の「一次利用」と、研究・政策等の 「二次利用」について、データから創出された価値を国民・患者へと還元するサイクルを構築するとした また、ヘルスケアデータを「社会的資産」と法的に位置づけ、包括的な法制度を整備する必要性を強調した。
◎一次利用(医療機関や民間)と2次利用(学術・研究)の分断が価値創出を妨げている
提言ではヘルスケアデータをめぐる課題について、「一次利用(医療機関や民間)と2次利用(学術・研究)の分断が価値創出を妨げている」と指摘。目指す方向として、ヘルスケアデータを「社会的資産」と明確に位置づけ、データの散逸を防ぎ、安全かつ円滑に流通させるためのルールと基盤を一体的に整備する必要性を強調した。また、データ活用に際しては。一次利用、二次利用の壁を越え、データから創出された価値を国民・患者へと還元するサイクルを構築すべきと主張。一次利用では、重複問診、検査、投薬の適正化や過去画像との比較、診療情報の取得負担の軽減、健康管理・疾病予防などで患者に成果を還元できる社会基盤の構築を求めた。
また、2次利用においては、第三者機関である「公的管理主体」が、データ管理から利用の受付、審査、提供までを一元的に担うワンストップ窓口として機能する。利用者は、検索用カタログを通じて必要なデータの所在や内容を把握し、承認された範囲内で、TRE/SPE(データの持ち出しを厳格に制御した安全な解析環境)等においてデータの分析を行う。これにより、学術研究、民間による研究開発、公衆衛生対応、公共政策立案等が推進されるとした。
◎二次利用で得られた知見は、新たな診断・治療法、創薬、疾病予防、政策改善につながる
特に重要なのは一次利用と二次利用が分断された別個の仕組みではなく、相互に補完し合う一体の構造として設計されることにあると強調。二次利用によって得られた知見は、新たな診断・治療法、創薬、疾病予防、政策改善へとつながり、その成果が再び一次利用の現場や患者・個人に還元される。こうした循環は、患者・個人にとっても、診断・治療機会の逸失の低減、移行期医療における情報断絶の解消、重症化予防の高度化、さらには一人ひとりの価値観に沿った治療選択や先端的治療へのアクセス機会の拡大といった具体的な便益につながるとした。
◎ヘルスケアDB 制度・運用・技術・信頼を一体で設計
ヘルスケア・データスペースの基本設計にあたっては、制度・運用・技術・信頼を一体で設計する。分断した制度や重複した判断をつなぎ直すため、医療DX推進本部を司令塔とし、 省庁横断・政府 一体で推進するほか、ヘルスケアデータを「社会的資産」と法的に位置づけ、包括的な法制度を整備する。さらに本人同意やオプトアウトへの過度な依存を避け、利用目的と範囲を法律上で明確に規定。「公益目的に資する利活用を実効的なものとするためには、本人同意を要しないデータ範囲についても法律上明確にしておく必要がある」とした。
国民・医療現場 への価値還元については、まず国民への還元について、「マイナポータル等を活用し、データ提供による創薬・医療への貢献など、定量的な成果公表を進め、制度への信頼を醸成」する。一方で医療機関への還元については。データ入力・連携に伴う事務負荷の軽減策を徹底や、最新の治療機会や治験への早期アクセスを実現する。さらにデータ標準化コストの補填や、AIによる診療意思決定支援の高度化など、具体的な価値還元を実現する。