ライフサイエンス産業への税制措置が議会での複数法案の焦点に
公開日時 2011/06/30 04:00
ライフサイエンス産業に対する優遇税制については議会に多数の理解を示す議員はいるが、その一層の具体化には、主要税制あるいは経済関連法制化への動きを待っている格好だ。
5月25日に開催された「上下両院合同経済委員会(JEC)」でのヒアリングで業界代表者らが税制優遇の必要性を様々な観点から訴えた。
米バイオテクノロジー産業協会(BIO)のArthur Sands氏(レキシコンファーマシューティカルズCEO)は、「ライフサイエンス業界のR&Dプロセスは長期にわたり、業界の基本単位は10年である」と業界の特殊性を説明、長期間にわたる投資などコスト面を考慮、税制優遇の恩恵を受ける価値があると理解を求めた。
このような見解に対し、Bob Casey委員長(民主党上院議員、ペンシルバニア州選出)は、昨年一旦提出された「ライフサイエンス雇用・投資法」(LSJIA)を今年夏、再度提出する予定であることを明らかにした。LSJIAでは、R&D控除を20%から40%に上げ、最初のR&D費1億5000万ドルに適用するとなっている。また、その代替として、米国企業は子会社から税金を支払わずにその金額がライフサイエンスに使用される限りは年間1億5000万ドルを米国に持ち込むことが出来る。同委員長のほかにも数名が税制優遇法案を提案している。
テキサス・ヘルスケア・アンド・バイオサイエンシズ研究所(THBI)のThomas Kowalski CEOは、テキサス州が25年間にわたる控除制度を持ち、新興企業には長期間メリットを享受できるので有益だと話した。
BIOのSands氏は、JECのデータがライフサイエンス企業に投資を促進するために連邦政府のインセンティブが必要なことを示している状況を紹介した。同氏によると、①2010年には資金調達額は4年連続で下降、2003年以降最低となった、②2010年にベンチャーファンドからバイオベンチャーへの投資額は20億ドルで2009年比27%の減少、③2008年から2010年第1四半期までのバイオテク企業の新規株式公開(IPO)は、2004―2007年の平均34件に比べるとわずか8件だった。2011年はわずかに上昇傾向だが、IPOの需要は弱い―などバイオテク企業に厳しい環境だと説明した。
Sands氏は、THBIのKowloski CEOの政府の直接的な財政支援の要求を支持すると同時に、業界の臨床試験への連邦政府の支援を求めた。また、連邦政府が臨床試験の財政支援を行う一方で、企業は直接それを求められない現状を問題視した。「企業は国立衛生研究所(NIH)と共同で行えるが、試験はNIHが運営する。それが問題」と指摘した。同CEOは、そのうえで、「橋渡し研究に政府が、政府という壁を越えてもっと資金投入することが重要」と政府が企業の研究への投資に対して柔軟に対応するよう求めた。
(The Pink Sheet 6月13日号より) FDAと米国製薬企業の情報満載 “The Pink Sheet”はこちらから