医薬産業政策研究所 欧米企業の国内研究開発拠点の撤退を憂慮
公開日時 2008/05/29 23:00
日本製薬工業協会が5月28日に開催したメディアフォーラムで、医薬産業政策
研究所の八木崇主任研究員は研究開発活動の国際化と競争激化に伴い、欧米製
薬企業が日本の活動拠点を閉鎖する事態が続いていることに対し「憂慮すべき
問題」と指摘。創薬研究の場として日本の魅力向上が必要で、外国企業誘致へ
の積極的な取り組みなど「政府による思い切った策が必要」と訴えた。
これは同研究所が実施した製薬企業の研究開発活動の実態に関する調査結果を
報告したもの。日米欧の主要製薬企業30社の医薬品特許情報を用い、自国と外
国における研究開発活動の国際化の現状を分析。日本の特許出願件数は米国に
次いで多いものの、伸び率で見ると、欧米主要国は年平均で約2割増加してい
るのに対し、日本では近年鈍化していることを紹介した。
また、欧米主要国では外国企業の特許件数が全体の3~4割を占めるが、日本
では1割にとどまっており、日本企業の研究開発活動が中心。八木氏は、欧米
企業の日本拠点撤退が進む現状を鑑み、「1割を維持することも容易ではない。
大きな危機感を持っている」と、国内の研究開発の質の低下に危惧した。
日本と対照的なのが中国で、バイオ・製薬産業を国家戦略の中心領域とし政府
予算を重点配分。外国企業の研究開発拠点誘致に熱心で、上海を中心に外国企
業のR&Dセンター開設が相次いでいる。バイオクラスターの整備やグローバ
ルな研究者の人材育成にも注力しているため、サイエンスレベルが向上、欧米
製薬企業にとって魅力ある市場が形成されてきている現状を報告した。