自治医大・鈴木氏 慢性鉄過剰症患者は増加、鉄キレート療法が重要に
公開日時 2008/06/10 23:00
自治医科大学内科学講座血液学部門講師の鈴木隆浩氏は6月10日、ノバルティ
スファーマが16日から販売する鉄キレート剤エクジェイドの記者発表会で、慢
性鉄過剰症の原疾患である骨髄異形成症候群(MDS)患者数が高齢化で増加し、
根本治療である移植も年齢条件のため適応外になる患者が多いことから、支持
療法である輸血のニーズが高まると指摘。今後は「鉄キレート療法が大事にな
ってくる」と見通した。エクジェイドは、輸血により体内に鉄が過剰に蓄積し
て発症する慢性鉄過剰症の治療薬として13日に薬価収載される予定。
鉄過剰症の治療薬は現在、注射用鉄キレート剤デスフェラール(ノバルティス)
がある。同剤は半減期が短く毎日8時間以上の点滴が必要であるため患者の負
担が大きく、十分な治療が行えない場合も多かったという。国内でデスフェラ
ールの投与患者数は2500~3000人。適切に連日投与しているケースは1割に満
たないとされている。
一方、エクジェイドは、注射用キレート剤に比べ1日1回投与の経口剤で使い
やすいのが利点。血球減少や白血球減少による感染症のリスクがあったり、頻
回の通院治療が困難な患者にも投与できる。デスフェラールよりも適切に治療
を行えるため、鉄が蓄積されることによる重篤な臓器障害のリスクを低減し、
生命予後の改善を図ることができるとされている。エクジェイドによりこれま
で治療が必要ながらも未治療だった患者が掘り起こされることが期待されてお
り、ノバルティスはピーク時に約4000人(中医協資料)の投与患者数を見込ん
でいる。
慢性鉄過剰症は、難治性貧血がみられる再生不良性貧血やMDSの支持療法とし
て行われる輸血が原因。輸血頻度が高いため体内に鉄が溜まりやすく、最終的
にはすい臓や肝臓、心臓など臓器障害を与える。患者数は国内で約5000人とさ
れている。