九大・内藤教授 ソラフェニブで長期投与可能、ベバシズマブ併用に期待
公開日時 2008/06/16 23:00
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九州大学大学院医学研究院の内藤誠二教授(泌尿器科学分野)は6月13日、バ
イエル薬品のプレスセミナーで講演。腎細胞がんにおける分子標的薬の展望や
課題を解説した中で、「ソラフェニブ(製品名:ネクサバール)は比較的安全
で使いやすい薬剤。長期間の許容性も高い」と強調。また、ベバシズマブ(中
外製薬の「アバスチン」)との併用療法では、PR(部分寛解)が52%、SD(安
定状態)が38%、腫瘍縮小効果は92%と「併用でかなり効果を高めることが期
待できる」と期待を示した。
内藤氏はソラフェニブの日本人に対する転移性腎細胞がんでの長期成績(フェ
ーズ2)の結果を報告。約2年間の長期試験で、腫瘍効果としてCR(完全寛解)
は確認されなかったが、PRが19.4%、SDが67.4%だった。「注目すべきは2年
超の長期投与で治療継続できた患者がいる」と説明した。参加者131人中、27
ヵ月後に治療を継続できたのは21人、30ヵ月は10人だった。また、治療開始か
ら早期にPRになる患者がいる一方で、SDの状態が続いた後、時間が経過してか
らPRになる患者が6人いたことから、「SDの状態が続いても継続して使うと良
い結果が出る可能性があることを示唆している」と評価した。
薬剤関連の死亡の報告もなく、副作用はいずれも中等~重度(グレード2、3)
で、生命を脅かすほどの副作用(グレード4)はなかった。特有の副作用とし
て膵酵素上昇があるが、同じ分子標的薬のスニチニブで高頻度(18~20%)に
見られる心血管系は3%程度。「切れ味の面ではスニチニブ(ファイザーの
「スーテント」)のほうが優れるが、副作用では怖い面がある」として、2剤
の使い分けとして「転移層が限局して小さい患者にはソラフェニブを使い、病
変が様々な臓器にある患者にはスニチニブを使うという考えがある」と述べた。
一方で、分子標的薬同士の併用療法についても解説。ベバシズマブとのソラフ
ェニブの併用試験(フェーズ1)の結果を報告し、PRが52%(25/48)、SDが3
8%(18/48)、腫瘍縮小効果は92%(45/48)で「良好な結果が得られた」と
した。副作用の面でもベバシズマブが高血圧、尿蛋白、ソラフェニブが発疹・
手足皮膚反応、高血圧、消化器症状と重なり合う部分が少ないため、「併用療
法でかなり効果を高めることが期待できる」と強調した。