厚労省・薬事分科会 サリドマイドの承認を了承、焦点は薬価へ
公開日時 2008/10/05 23:00
厚生労働省の薬食審・薬事分科会は10月3日、藤本製薬の多発性骨髄腫治療薬
サレドカプセル(一般名:サリドマイド)の承認を了承した。▽TERMSの適切
な実施▽インフォームドコンセントの徹底▽全例調査の実施――が承認条件。
正式承認は10月中旬の見通し。厚労省は藤本製薬が提示した安全管理手順(TE
RMS)について薬害被害者や患者など関係者を交えて検討したほか、有効性・
安全性と安全管理方策の両面からパブリックコメントを求めるなど、同剤の承
認に向け慎重に議論を進めてきた。
多発性骨髄腫の患者数は約1万4000人で新規患者は3000人程度。高齢者や女性
に多いという。サリドマイドは、妊婦が服用して胎児の手足に障害がでるとい
った深刻な薬害被害を引き起こし、1962年に国内で販売中止となった。しかし、
近年になり、海外で多発性骨髄腫に効果があることが判明、国内でも個人輸入
するケースが増えていることから、藤本製薬が開発を進め06年8月に申請して
いた。適応は「再発または難治性の多発性骨髄腫」。06年には59万錠(カプセ
ル含む)が国内に個人輸入されており、服用者は推定で1500人とされる。
TERMSは、藤本製薬が使用する医療機関、医師、患者、流通担当者らをあらか
じめ登録させ、薬剤の使用状況を細かくチェックする仕組み。使用医療機関は
日本血液学会が認定する400~500施設とみられる。TERMSの適切な運用のため
に藤本製薬ではMRを100人規模で増員し、現在準備を進めている。
ただ、厚労省内では、承認条件を厳しく課すことでMR増員を図ったとなると、
企業としての採算と患者負担の重さでバランスをとるのが難しくなり、薬価交
渉が難航するのではと懸念する声もある。個人輸入の場合の価格は、英国製が
1個1600円で月9万円、インド製は1個500~600円など、生産国によって大き
な差がある。サレドを巡る今後の焦点は、薬価に移りそうだ。
日本骨髄腫患者の会の上甲恭子副代表は「必要な患者さんに安全に確実に薬剤
を届けられる道を開くことができて安堵している。被害に遭われた方や承認ま
で間に亡くなれた患者さんもいるので手放しには喜べないが、いろいろな方の
協力を得て、ここまで来ることができたと思っている」とコメント。薬価につ
いては「個人輸入による負担額とギャップが大きいと困ることになる。現状を
見ていただき、格別の配慮をお願いしたい」とした。