中医協・前田公益委員の任命不同意 新薬価制度の行方は
公開日時 2009/02/23 23:00
中央社会保険医療協議会公益委員で薬価専門部会長でもある前田雅英氏(首都
大学東京都市教養学部長)の任命が2月23日に国会で不同意となったことに対
し、製薬業界はショックを隠せない。業界が提案した薬価制度改革案に前田氏
が理解を示し、中医協の俎上に載っているからだ。今後の議論への影響につい
ては見方が分かれている。
公益委員は国会同意人事案件。2月20日に衆議院本会議で与党の賛成多数で可
決したものの、民主党が多数を占める参議院では2月23日の本会議で、前田氏
の任命については投票総数228に対し反対128。両院の同意が必要なこの人事は
不同意となり、2月末に任期が切れる。前田氏は、薬価専門部会長でもあり、
異論も少なくない中で、業界が提案した新薬価制度案を裁定により検討の俎上
に載せた。業界は「公益委員には数少ない薬に理解のある人」と見ており、議
事運営に期待感があった。
不同意理由は、民主党議員関係者によると、前田氏が座長を務めた厚生労働省
の「診療行為に関連した死亡の死因究明等のあり方に関する検討会」の進め方
や案が「役所の言いなり」であることなどを問題視した。中医協とは関係ない
理由に、製薬業界には「江戸の仇を長崎で討たれたようなもの」との見方があ
り、そんな形で業界案の理解者を失うことに「大変残念」「正直言って痛い」
と、ショックを隠さない。
今後の議論への影響については、見方が分かれる。薬価専門部会専門委員の長
野明氏は「それぞれの委員の方が見識に基づいて議論されてきているものであ
り、大きく議論が様変わりするとは思えない」とコメント。厚労省医政局経済
課の木下賢志課長も「薬価維持特例と市場拡大再算定、特例引き下げを総合的
に議論していかなければならないという一定の方向感は共有しているので、そ
の路線は変わらない」と見通す。一方で、メーカー所属の厚労省OBは「議論と
はいえ、最後は部会長の仕切り。今までやってこられた方がいなくなるのは影
響が大きい」と指摘する。
後任には前部会長ということで遠藤久夫・現中医協会長に期待する声があるが、
先の厚労省OBは、麻生政権の不透明感増す情勢を挙げ「先を急ぐより、ちょっ
と様子を見た方がよいのでは」と話す。それに対し薬価研幹部は「今が業界案
を実現するチャンス。先延ばししたら、ぽしゃってしまうと思う」と、議論は
粛々と進めるべきとする意見もあった。