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帝京大・堀江教授 腎細胞がん薬トーリセル、1次選択薬でスーテントとの棲み分け可能

公開日時 2010/09/06 04:01

帝京大学医学部泌尿器科学の堀江重郎主任教授は9月2日にファイザーが開いた記者発表会で講演し、同社が7月に承認取得した腎細胞がん(RCC)の分子標的抗がん剤「トーリセル」(一般名:テムシロリムス)の臨床上の有意性やポジショニングについて解説。RCCの75%を占める淡明細胞がんの予後不良患者や、残り25%を占める非淡明細胞がんのファーストラインで使用が推奨されるほか、スーテントやネクサバールといったチロシンキナーゼ阻害薬の効果不応例に対するセカンドライン以降の薬剤として推奨されるとした。また、週1回の静注剤で病院の外来化学療法室で投与されるため、確実なコンプライアンスが可能性な点も強調した。

トーリセルは国内で根治切除不能または転移性のRCCの分子標的薬としては4番目の薬剤。mTOR阻害剤としてはアフィニトール(経口剤)に次ぎ2番手となるが、点滴静脈内投与という点で特徴が異なる。気になるのは、既にファーストラインで使用されているスーテントとの棲み分けだが、薬剤のポジショニングが異なるため、トーリセルとの棲み分けが可能になる模様。スーテントは淡明細胞がんの良好・中間の患者に対する投与が推奨されるという。

堀江氏は海外臨床試験(フェーズ3)で進行性RCCのpoor risk(予後不良)患者での全生存期間(OS)が10.9カ月で、スーテント(5.3カ月)やアバスチンとインターフェロンα(IFN-α)との併用療法(6.0~6.6カ月)など他の分子標的薬に比べ、2倍程度延長させた結果を紹介したうえで、「予後不良患者に有効な薬剤」と評価した。また、組織型などのサブセット解析の結果、トーリセル単独投与群の淡明細胞がんでのOSは10.6カ月、IFN-α単独投与群で8.2カ月、非淡明細胞がんでは前者が11.6カ月、後者が4.3カ月であり、淡明細胞がんと非淡明細胞がんでOSの延長が確認されたことから、「淡明細胞がんのみならず、非淡明細胞がんにも選択される薬剤になる可能性がある。IFN-αに替わる治療薬であることも示唆された」(ファイザー)としている。

国内臨床試験では予後不良患者でのOSは9.8カ月。日本人が参加した国際共同(アジア)フェーズ2試験ではスーテントやネクサバールといったチロシンキナーゼ阻害薬の治療後に投与しても、臨床的利益率(CR+PR+24週以上のSD)は40.6%にのぼるなど、セカンドライン治療薬としての有用性の高さが示された。
 
安全面では「トーリセルは免疫抑制作用があるため、感染症を起こす可能性がある」と注意を促すとともに、特に間質性肺疾患は国際共同(アジア)フェーズ2試験で間質性肺炎の専門医による詳細な検討で全症例の57.1%(日本人では50.0%)報告されたことから、注意が必要との見解を示した。ただし、ステロイド剤の投与で「相当数の人が改善することが分かっている。イレッサ(肺がんの分子標的治療薬)とはそこが異なる」と症状が出ても対処が可能とした。
 

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