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武田薬品と京大の共同研究「T-CiRA」終了 医師主導治験スタートなど一定成果も実用化には至らず

公開日時 2026/02/04 05:30
武田薬品と京都大iPS細胞研究所(CiRA)は2月3日、共同研究プログラム「T-CiRA」を終了すると発表した。アカデミアと製薬企業がタッグを組み、シーズが実用化に至るまでの“死の谷”を越えるチャレンジを進めてきたT-CiRA。T-CiRAから生まれたプログラムであるiPS由来膵島細胞シートで1型糖尿病を対象に医師主導治験が行われているものの、10年間の研究期間では実用化には至らなかった。武田薬品のクリストフ・ウェバー代表取締役社長CEOは、T-CiRAを通じて産学連携に取り組む人材育成にも寄与したとして、「あらゆる意味で、T-CiRAは未来への架け橋となった」と意義を強調した。

◎前例のない産学連携 10年間で200億円の研究資金を投じる

「1時間の面談の中で、ウェバー社長からぜひ武田とCiRAで何か一緒にやりましょうというご提案があった。ウェバー社長から、“ラージかミディアムかスモールかどのスケールでやりますか?”と質問をいただき、私は、すぐさま「ラージでお願いします」と答えたのを覚えている」―。京都大iPS細胞研究所の山中伸弥教授は遡ること12年前の2014年にT-CiRAのきっかけとなったウェバー社長との会話をこう振り返った。

その言葉通り、16年度にスタートしたT-CiRAに武田薬品は10年間で200億円の研究資金を投じた。長期間、大規模な「前例のない産学連携」としてスタートした。これまでの産学連携とは異なり、「タケダの研究所の中に、大学の私たちが入り込んで、企業の中で共同研究を行う」ことも新たな試みだった。武田薬品、CiRAから約100人の研究者が集い、武田薬品の有するノウハウや化合物ライブラリー、創薬プラットフォームを活用することで、実用化を加速させる狙いを込めた。

◎246の学会発表、58件の新規出願特許、66の論文発表

研究期間を通じ、246の学会発表、58件の新規出願特許、66の論文発表(25年10月末時点)などの成果をあげた。T-CiRAからスピンアウトしたスタートアップ・オリヅルセラピューティクスは、膵島移植が適応となる重症1型糖尿病患者様を対象とした医師主導治験を開始。武田薬品は米アロイ・セラピューティクスと細胞治療プラットフォーム「iCAR-T」の開発に関する提携およびライセンス契約を結び、オンコロジー領域の治療法開発の加速を目指している。山中教授は、「10年という期間では、時間が足りない。実用化には20年、30年かかるのが普通だ」と指摘。「いくつかがベンチャーに引き継がれて、一つは臨床試験に至っているというのは非常に順調に行っているのではないか」と述べた。

◎オルガノイド活用の非臨床病態生理評価アッセイ×AIで「創薬力向上」

人間の機能を高度に再現するオルガノイドを活用した新たな非臨床病態生理評価アッセイも進展させた。オートメーション技術やAI技術を組み合わせることで、「創薬の競争力向上」にもつながると武田薬品R&Dジャパンリージョンヘッドの梶井靖氏は武田薬品としてのベネフィットを話した。米アロイ・セラピューティクスとのライセンス契約による利益を見込む。

10年間の研究期間の間には、武田薬品の重点戦略の変更などの変化もあった。循環器や糖尿病領域は重点領域から外れ、25年9月30日には細胞療法の取り組みを中止した。ウェバー社長は「新技術の開発には、成熟までに多くの時間と多大なコストがかかる。競争環境に対して注意を払いながら、投資先を選ぶことが必要だ」と指摘「このプログラムは現在の市場環境では競争力が十分でないため、(細胞療法の)中止を決定した」と説明した。一方で、T-CiRAで得た細胞管理や製造プロセスの知識を得たとして、「将来的により競争力を持てる疾患が見つかれば、同様のプログラムに再び取り組む可能性がある」との考えも示した。

T-CiRA自体はこれで終了するが、山中教授は「アカデミアとインダストリーの最大の違いの一つは、製薬企業の一番重要な決断は、いかにプロジェクトを止めるかということ。一方、私たちアカデミアは諦めが悪くて、いかにプロジェクトを続けるかばかり考えている。その先に患者さんが待っているプロジェクトであれば、石にしがみついてでも続けたい。諦めなかった者が最後に勝つと信じている」と表明。「今の段階では iPS 細胞療法は製薬企業にとって上位ではないかもしれないが、私たちが必ず我慢強く続けることで、地位が上がり、タケダをはじめ、大きな製薬企業の有力なプラットフォームになる日が来ると、あきらめずに頑張っていく」と力を込めた。

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