旭化成・工藤社長 医薬事業「第3の大型M&A」明かす 26年度中にも1000億円規模のディール目論む
公開日時 2026/01/09 04:52

旭化成の工藤幸四郎代表取締役社長兼社長執行役員は1月8日、重点成長領域に関する事業説明会で、医薬事業について「3つめの大型M&Aを中計の機会を狙って仔細に検討している」と明らかにした。同社は20年3月に買収した米・Veloxis社の腎移植に用いる免疫抑制剤Envarsus XR、24年9月に買収したスウェーデン・Callidas社の原発性IgA腎症治療薬・Tarpeyoが米国で堅調に推移し、医薬事業を牽引している。工藤社長は早ければ26年度中に1000億円規模のM&Aを目論んでいるとし、「大型M&Aをもう一発、その後ライセンスインも充実させて、パテントクリフに注意しながらパイプラインを揃えていく」と意欲を示した。
「2025年度は過去最高利益を出す計画となっている」-。この日の説明会で工藤社長はこう強調した。同社では石油化学関連のケミカル事業は縮小しているものの、医薬・クリティカルケア事業など「重点成長領域」を利益成長ドライバーに据え、27年度には2700億円の営業利益達成を見込む。工藤社長は、「ヘルスケア、北米、AI・半導体といった成長市場で事業展開をさらに進めていきたい」と述べ、Diversity(多様性)とSpecialty(独自性)を併せ持つ同社のエコシステムをさらに進化させる決意を滲ませた。
さらに工藤社長は、同社の多様な事業と無形資産を柔軟に組み合わせることで、環境変化に強い経営を実現し、そこにデジタルやAIを組み合わせることで相互活用を活発化させていくと説明。「さまざまな無形資産をフル活用して一体となってさらに成長を目指していきたい」と思いを語った。
◎ヘルスケア 30年営業利益1500億円 「ヒットを積み重ねる」 Tarpeyoに期待

四ノ宮健専務執行役員兼旭化成ライフサイエンス代表取締役兼社長執行役員は、医薬・ライフサイエンスとクリティカルケアを含むヘルスケア領域について、「2030年に営業利益1500億円を目指し、旭化成の成長を支える大きな柱の一つとなることを目標としている」と述べた。医薬事業は、「ホームラン狙いではなく、ヒットを積み重ねるビジネスモデル」と表現し、ブロックバスターを狙わずに、専門医の限られる希少疾患に絞ることで、小規模な臨床試験・MR活動などにとどめ、営業費用を抑えて開発に投資する構造だと説明した。
中でもTarpeyoへの期待は大きい。2025年版KDIGO(Kidney Disease: Improving Global Outcomes)IgA腎症およびIgA血管炎の管理に関する国際ガイドラインにおいて疾患修飾薬の中でTarpeyoが唯一推奨され、一日一回の経口投与であることなどから、IgA腎症の疾患修飾薬で第一選択薬となり得るとの認識を示した。投与患者数は買収時の予想を上回るペースで増えており、四ノ宮健専務執行役員は、「当初は2030年ごろにピーク売上高を迎えると想定していたが、2~3年早まる可能性がある。さらに、長期投与や再投与の臨床試験中で、結果次第では売り上げがさらに伸びる可能性もある」と強い期待感を示した。
◎クリティカルケア 下期から回復へ 睡眠時無呼吸症候群事業にも注力
一方、クリティカルケア事業では、除細動器の新製品の上市遅れなどが影響し、期初予想に対し下方修正した。下期以降は回復し本来の成長軌道に戻るとの見通しを示した。四ノ宮健専務執行役員は、「成長の鍵は除細動器の販売、LifeVestを使う患者さんの数をどれだけ増やせるか」だと説明した。
一方で、睡眠時無呼吸症候群に関連した事業トピックスに触れ、米国FDAが閉塞性睡眠時無呼吸症初の治療薬としてGLP-1の適応拡大を承認した際に、「処方には睡眠時無呼吸症検査が必要との要件を課した」と指摘。「睡眠時無呼吸症を検査し、GLP-1を処方できる医師が増加することで、当社のデバイスの販売増加が期待される」との期待感を表明した。
すでに米国では閉塞性睡眠時無呼吸症に関するGLP-1のテレビCMも流れており、同領域での成長に応じて、「睡眠関連事業も新しい成長分野として広がっていき、30年にはクリティカルケア事業として売上40億ドル、約6000億円規模を目指し、より多くの患者さんの健康と命を支えていく」と見通した。