【日本高血圧学会リポート】PROGRESS試験 降圧療法は孤立性拡張期高血圧での心血管疾患を予防
公開日時 2010/10/20 06:06
降圧療法は孤立性拡張期高血圧での心血管疾患を予防効果があることが、多施設国際共同試験「PROGRESS(Perindopril Protection against Recurrent Stroke Study)試験」から明らかになった。The George Institute for International Health, University of Sydneyの有馬久富氏が、日本高血圧学会の「JSH TOP10」のセッションで報告した。
高血圧症は、収縮期・拡張期の両血圧値が高い収縮期・拡張期高血圧(SDH)、収縮期血圧値のみが高値の孤立性収縮期高血圧(ISH)、拡張期血圧値のみが高値の孤立性拡張期(IDH)の3種類に分類されるが、このうちIDHは高血圧症のなかでは最も発生頻度が低く、高血圧症のなかでは20%以内と報告されているが、一部の大規模コホート研究ではIDHも他の種類の高血圧と同様に心血管疾患発症のリスクファクターになるといわれている。
しかし、国内のコホート研究「大迫研究」などの結果からは、降圧療法を受けている患者の比率は、SDH60%、ISH56%、IDH40%となっており、IDHは発症頻度だけでなく降圧療法を受けている患者割合も低いため、降圧療法による心血管疾患発症リスク軽減効果については定見がないのが実状である。
このため有馬氏らは「PROGRESS試験」の患者を対象にIDHに対する降圧療法の心血管疾患予防効果について検討した。
「PROGRESS試験」は脳卒中あるいは一過性脳虚血発作の既往をもつ高血圧患者4283例を対象に降圧療法による脳血管障害の2次予防効果を検討したもので、利尿薬の適応および禁忌のない患者に対して、アンジオテンシン変換酵素阻害薬・ペリンドプリルエルブミン4mgと利尿薬インダパミド2.5mgの併用と二重プラセボ、利尿薬の適応あるいは禁忌のある患者に対してはペリンドプリルエルブミン4mgかプラセボを無作為に割り付け、脳卒中、心筋梗塞、心血管死亡の発生頻度を平均追跡期間3.9年で比較した。
対象患者の内訳は、SDH(収縮期血圧140mmHg以上かつ拡張期血圧90mmHg以上)2045例、ISH(収縮期血圧140mmHg以上かつ拡張期血圧90mmHg未満)1923例、IDH(収縮期血圧140mmHg未満かつ拡張期血圧90mmHg以上)315例。孤立性拡張期血圧は全体の7%だった。
追跡期間中に心血管疾患を発症した794例の内訳は、SDH387例(実薬群158人、プラセボ群229人)、ISH357例(実薬群152人、プラセボ群205人)、IDH50例(実薬群22人、プラセボ群28人)。
降圧療法による平均収縮期血圧値減少はISH8.8mmHg、IDH6.2mmHg、SDH10.0 mmHg、降圧療法による心血管疾患予防効果は、SDH32%(95%CI 17~45%)、ISH27%(95%CI 10~41%)、IDH28%(95%CI -29~60%)であり、治療効果の均一性を検討するとp=0.89で高血圧タイプ別での有意差は確認されなかった。
このことから有馬氏は「降圧療法は孤立性収縮期高血圧や収縮期・拡張期高血圧だけでなく、孤立性拡張期高血圧でも心血管疾患を予防することが示唆された。また、この研究の結果は、血圧分類・治療方針の決定で収縮期血圧値だけでなく、拡張期血圧も用いるよう推奨している現在の高血圧診療ガイドラインを支持するものである」と結論付けた。(修正済み)
【お詫びと訂正】同演題を発表した有馬久富氏の肩書に誤りがありました。正しくは、The George Institute for International Health, University of Sydney です。お詫びして訂正します。