【MixOnline】パンくずリスト
【MixOnline】記事詳細

心臓死移植と脳死移植で、移植腎の長期転帰に有意差なし

公開日時 2010/10/29 03:00

移植腎の長期的な転帰について、心臓死移植と脳死移植で比較検討したコホート研究の結果、初回移植患者の5年生着率と1~5年の推算糸球体濾過量(eGFR)は、差がないことがわかった。心臓死の腎移植で、生着率の悪化と関連していた要素は、提供者と受給者が高齢であること、12時間以上の冷虚血時間であった。英Cambridge大のDominic M Summers氏らの研究グループが、学術誌「THE LANCET」のオンライン版で8月19日報告した。


国では、死体腎移植の約3分の1が心臓死提供者からのものであるが、心臓死からの腎臓は、心肺機能停止から献腎摘出までの温虚血時間が長いことから、その長期的な生着率と腎機能について懸念が持たれている。


研究グループは、英国民健康保険(NHS)の移植登録から、2000年1月から2007年12月までに23施設で行われた腎移植9134例の提供者と受給者のデータを抽出し、長期的な生着率とeGFRを評価し、またこれらの関連要素を分析した。追跡期間中間値は、6.1年。


8289例が脳死からの移植だったのに対し、心臓死からの移植は845例だった。脳死提供者に比べ心臓死提供者は、年齢が低く(心臓死43.5歳 vs 脳死45.7歳、P値<0.0001)、男性の割合が高く(63% vs 51%、P値<0.0001)、喫煙率が低かった(36% vs 49%, P値=0.001)。また心臓死提供者では、臓器摘出直前の血清クレアチニン濃度が若干低い傾向も見られた(78μmol/L vs 81μmol/L, P値=0.002)。


心臓死からの受給者は、脳死からの受給者よりも前腎移植歴の割合が低く(11% vs 17%, P値<0.0001)、HLA適合度が有意に低い傾向にあった。一方、冷虚血時間は短かった(17.7時間 vs 18.0時間、P値<0.0001)。


分析の結果、初回の腎受給者において、心臓死からの受給者(739人)と脳死からの受給者(6759人)の間で、5年生着率に有意差はないことがわかった(ハザード比1.01, 95%CI: 0.83-1.19、P値=0.97)。また1~5年のeGFRについても有意差はなかった(12カ月目–0.36 mL/min per 1.73㎡, 95%CI: –2.00-1.27, P値=0.66)。


これらの受給者で心臓死移植腎の長期転帰に有意に関連していた因子は年齢で、提供者、受給者のどちらにおいても、60歳以上の場合40歳未満と比べて生着不全リスクが2倍以上に上っていた(提供者:ハザード比2.13, 95%CI:1.30-3.51, P値=0.003, 受給者:ハザード比2.14, 95%CI:1.27-3.62, P値=0.0045)。


また冷虚血時間の延長と生着不全との間に強い関連性が見られ、冷虚血時間が12時間以上に及ぶと生着不全リスクが上昇する傾向があったが、統計的有意差は示されなかった。HLA適合度や温虚血時間などとの関連性はなかった。


これらの結果から研究グループは、「心臓死提供者からの移植腎は、初回受給者において優れた5年生着率と機能度を示し、脳死提供者からの移植腎と同等である」と結論付けている。


 

プリントCSS用

 

【MixOnline】コンテンツ注意書き
【MixOnline】関連ファイル
【MixOnline】記事評価

この記事はいかがでしたか?

読者レビュー(0)

1 2 3 4 5
悪い 良い
プリント用ロゴ
【MixOnline】誘導記事
【MixOnline】関連(推奨)記事
【MixOnline】関連(推奨)記事


ボタン追加
【MixOnline】記事ログ
バナー

広告

バナー(バーター枠)

広告

【MixOnline】アクセスランキングバナー
【MixOnline】ダウンロードランキングバナー
記事評価ランキングバナー