【World Topics】米BMSとファイザー エリキュース 患者向け直販サイトを通じ割引率40%超で提供
公開日時 2025/07/23 04:53
米・ブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMS)と米・ファイザーは、同社のメガヒット商品である経口抗凝固薬エリキュースを新しい患者向け直接販売プログラム「Eliquis 360 Support Program」を通じ、割引率40%超で提供すると発表した。従来の流通チャネル(PBM、保険会社、薬局等)を介さないメーカー直販で、経費を削減するとともに、医療保険の有無にかかわりなく希望者が誰でも購入できるよう配慮した。2025年9月8日から販売を開始する。(医療ジャーナリスト・西村由美子)
このタイミングでのメーカー直販サイトの開設と割引販売の開始は、トランプ政権が製薬業界に強く要請しているブランド薬の薬価引き下げに対応する動きであることは明らかだ。エリキュースの2024年の販売実績はグローバル市場を合わせて13.3ビリオンドル(約2兆円)という。そのうち9.6ビリオンドル(約1.4兆円)が米国市場での売上げである。
◎販売予定価格は定価の月額約606ドルのところ割引率43% 346ドル
メーカー直販サイトでの販売予定価格は、定価月額約606ドルのところ割引率43%の346ドル。しかし、実際には、この価格は一般の民間医療保険に加入している患者が支払っている平均自己負担額の9倍以上高いという。現在、米国で発行されているエリキュースの処方箋の90%以上は保険でカバーされている。このため専用サイトの割引販売の最初のターゲットは処方箋の10%を占めている私費での購入患者となる見通しだ。
さらに、この346ドルという価格は、メディケアが「インフレ抑制法」に基づく同社との交渉で要求している2026年の割引価格よりもはるかに割高となる。なお、非公式だが月額$231との説が有力だ。ただし、この金額はメディケアから製薬企業への支払い額であって患者の自己負担額ではない。
◎米・BMS とファイザー 医薬品価格の透明性を高める効果がある
米・BMS とファイザーは、「Eliquis 360 Support Program」での直販には、医薬品価格の透明性を高める効果があるとともに、まだエリキュースを使用していない患者へのプロモーション効果も期待したいと語っている。
◎メーカー直販サイトの開設はすでに時代のトレンド リリー、ノボも独自に立ち上げ
トランプ政権による薬価引き下げ圧力への対応策との印象は拭えないが、しかし製薬メーカー各社の個性を反映したメーカー直販サイトの開設はすでに時代のトレンドになりつつある。ファイザーは、2024年に、医薬品、ワクチン、診断テストを患者に直販する「PhizerForAll」(https://www.pfizerforall.com/)を立ち上げている。
米・イーライリリーも2024年、テレヘルスと薬局サービスを組み合わせ糖尿病、肥満症、偏頭痛などの治療薬を患者に直販する「LilyDirect」(https://lillydirect.lilly.com/)を立ち上げており、今年始めには患者がいち早く利用できるようアルツハイマー治療薬の直販も開始した。
また、ノボ・ノルディスクは2025年3月に「NovoCarePharmacy」を立ち上げ、同社の肥満症治療薬ウゴービを月額$499(公示価格は月額$1349)で直販開始している。