ＦＤＡの承認薬剤を標準審査と優先審査の区分でみると、2010年は承認薬剤の46％が優先審査で2005年の72％、2004年の52％に次ぐ数だ。　優先審査の平均審査期間は5.68か月。具体的な品目では、エーザイのHalavenが7.5か月、シャイアのVprivは6か月とした優先審査期限より1週間早く、サノフィ・アベンティスのJevtanaはわずか2.5か月だった。2010年のBLA（生物製剤）は優先審査を受ける割合が例年に比べ小さくなってきているが、これは、バイオテクが先端技術から主流の技術に成熟してきたためと見られる。ＣＤＥＲの３分の１の生物製剤と生物製剤評価研究センター（ＣＢＥＲ）の６つの承認薬剤が優先審査となった。ＣＤＥＲは治療用BLA、ＣＢＥＲはワクチン、血液・血漿製剤などを審査している。

優先審査は、歴史的に標準審査よりも最初の審査サイクルでの承認を受けやすい傾向にあるため、6か月の平均審査期間が短縮する傾向にある。ＮＭＥ（新規化合物）は、最初の審査サイクルでの承認が93％、審査期間では13.6か月となり、ＢＬＡの50％、18.1か月に比べ大幅に改善している。しかし、ユーザーフィーの目標ではＮＭＥは87％、ＢＬＡは75％で大差はない。

ＣＢＥＲの６件のＢＬＡの申請から承認までの期間はＮＭＥの平均13.6か月よりも短い13.2か月（審査に手間取ったAscleraを除くと9.9か月）をマークした。これは、ＣＤＥＲのＢＬＡの18.9か月よりもかなり短い。最初の審査サイクルでの承認は、ＣＢＥＲでは６剤のうち４剤だが、ＣＤＥＲでは、６剤のうち２剤だ。ＣＢＥＲが承認を与えた薬剤のうちワクチンは、ノバルティスの髄膜炎ワクチンMenveoとファイザーの肺炎球菌ワクチンPrevnar13だ。

◎ＲＥＭＳを義務付けられる傾向が高いＢＬＡ

治療用ＢＬＡは66％が、リスク評価緩和戦略（ＲＥＭＳ）を義務づけられ、ＮＭＥの27％に比べ、ＲＥＭＳが課せられる割合が高いことを示している。だが、ＮＭＥも2010年にはＲＥＭＳ以外の市販後要件（ＰＭＲ）を加えると80％に何らかの条件が付与されている。ＲＥＭＳを課せられた中には、ブロックバスターの呼び声が高い、ノボノルディスクのビクトーザ、ベーリンガーインゲルハイムのプラダキサがある。さらに、アコーダのAmpyraとノバルティスのGilenyaも注目されている。一方、すでによく理解されている薬効分野でＲＥＭＳなどを免れた製品で、最初の審査サイクルで承認されたものにビスタコンの眼科用ヒスタミン拮抗剤Lastacaft、大日本住友製薬の子会社サノビオンの非定型抗精神病薬ラツーダ、シャイアのゴーシェ病治療薬Vprivがある。

◎オーファンがポピュラーに

希少疾患は、大手製薬企業が新規事業部門に参入する際の「魔法のことば」になっている。2010年は、希少疾患で承認された半数の薬剤のみが希少疾患薬の指定を受けている。希少疾患治療薬の指定を受けたのは、オーキシリウムのディピュイトレン拘縮治療薬Xiaflex、オーファンヨーロッパのＮＡＧＳ酵素欠損症治療薬Carbaglu、アコーダの多発性硬化症（ＭＳ）に伴う歩行障害治療薬Ampyraなど。あとの半分は、後日、同領域に参入した。後者には、ジェンザイムのポンペ病治療薬Lumizyme、ＣＳＬベーリングの原発性免疫不全症治療薬Hizentra、カマダのα‐１抗トリプシン欠乏症治療薬Glassiaの3剤がある。ノバルティスのＭＳ治療薬Ｇｉｌｅｎｙａは、希少疾患の指定を受けなかったが、迅速審査の指定を受けた。

2010年は希少疾患治療薬にとっては平均的な年といえた。ＣＤＥＲのＮＭＥおよびＢＬＡのほぼ４分の１が希少疾患治療薬だった。ＣＢＥＲのＢＬＡ６剤はいずれも希少疾患薬ではなかった。過去10年間では、ＮＭＥのうちの希少疾患薬指定の割合は、大体３分の１（2005年35％、2007年31％）から10％程度（2001年８％、2003年10％）の範囲内だ。