内定辞退をした二人の転職者、KさんとOさんの違いとは…。

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Kさん（27歳）とOさん（45歳）は、同じ化粧品業界で営業として働く新鋭とベテラン。お互いに接点こそなかったが、2人は、よく似た経過をたどって転職をやり直すことになった。

KさんとOさんが登録に来たのは4ヶ月ほど前。我々が紹介した会社で転職が決まる直前までいったが、ともに自主応募の企業から内定が出て、そちらに行くことを決断したのだった。

Kさんは、我々が紹介したA社で内定が出ると、すぐに「お世話になります」と返答をしていた。しかし、その1週間後、突然「他の会社から内定が出ましたので、そちらに行きます」とのメールが。
自主応募の話をひとつも聞かされていなかった我々は、慌ててKさんに確認の電話を入れた。

「メールに書いた通りです。それ以上お話しすることはないんですが…」
メール直後に電話があったことに、Kさんはあきらかに不快な様子だった。
「しかし、一度は入社しますと言った以上、A社にも説明をしなければなりませんよ」
「そういう面倒なのはイヤなんですよ。そのためにエージェントを間に置いているんじゃないですか。いま、仕事中なので失礼します」
その後、Kさんは、自主応募した会社のことを記した短いメールをくれたが、それ以外、A社を辞退したことに対する対応はなく、しばらく彼からの連絡は途絶えることになった。

一方のOさんは我々に自主応募していることをあらかじめ教えてくれていた。エリアマネージャーとしての実績も高いOさんは、人脈が広く、「ぜひ来て欲しい」という誘いもあったようなのだが、条件が合わずに我々が紹介したB社への入社に傾いていた。

ところが、一度不採用になったはずの会社から「急ぎ、最終面接をするから来て欲しい」と、声がかかったのだ。面接前、Oさんは我々に恐縮した様子で連絡をくれた。
「B社で決まりかけていたのに、こんなことになって…」
「いえいえ。その会社はOさんが是非行きたいと仰っていたところじゃないですか。明日の面接、頑張ってきて下さい」
その後、話はトントン拍子に話は進み、Oさんは自主応募の会社に入社することになった。我々からの説明で、B社は内定辞退に理解を示してくれていたが、Oさんは「直接謝りにいきます」と、わざわざB社に出向いてくれた。

数か月後、KさんとOさんの2人は転職後の状況変化等により、再転職を考えることになった。

Kさんは、前回の経緯については一言もなく、「転職した会社で仕事がなくなったので、また求人紹介をして下さい」とだけ言って、転職活動をはじめた。Oさんは、再面談の時に丁寧に我々に前回の内定辞退を詫び、それから、なぜ新しい会社から再転職しなければならない事情について、事細かに教えてくれた。

当然のことだが、我々は全ての登録者の方に公平に接したいと考えている。以前の経緯がどうあれ、どちらかを優先しようなどという考え方は、厳に慎まねばならない。
しかし、転職の仲介者として、我々は、求人を出している企業にも責任を負っているという現実がある。前回と同じような内定辞退がないか、我々が心の片隅でKさんに対する疑念を持つのは、仕事上、やむを得ないことなのだ。一方、Oさんについては、信頼をもって企業と話ができる。もし、何か問題があれば、Oさんなら必ず事前に連絡をくれるはずだからだ。

我々は、企業と給与・勤務地などの交渉で、人事にかなり無理なお願いをすることがある。ただ、無理を通したのに、やはり内定辞退でしたということになれば、せっかく協力してくれた人事の立場を悪くしてしまうことになりかねない。他の転職者の方の選考に影響する可能性もある。
KさんとOさん、この2人で、どちらがより強い交渉ができるかは明らかだろう。転職エージェントを使う場合でも、個人的な信頼が、決定的に重要なファクターになりえるのだ。

キャリアの浅さが原因か、デジタル世代のせいなのか、若手の方の中には前触れなく意志が変わる人が多いのも事実。一方で、経験を重ねてそれなりの地位にある方は、多忙であるはずなのに、相手企業に対してはもちろん我々にもマメに連絡を下さるので驚かされる。

Kさんが言っていたように、我々が間に入る意味は「根回しなんて面倒。ドライに出来るから」ということもあるだろう。だが、ビジネスパーソンとして、より高い次元に進もうと考えるなら、人間関係を粗末に扱うべきはないように思う。我々が困るからと言いたいのではない。それは、結局、本人に返ってくることなのだ。